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A相互銀行不当利得金返還請求事件
- 事件の分類
- 賃金・昇格
- 事件名
- A相互銀行不当利得金返還請求事件
- 事件番号
- 秋田地裁 − 昭和46年(ワ)第210号
- 当事者
- 原告 個人7名
被告 株式会社A相互銀行 - 業種
- 金融・保険業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1975年04月10日
- 判決決定区分
- 一部認容(原告一部勝訴)
- 事件の概要
- 原告ら7名は被告A相互銀行に雇われている女子行員である。 同銀行の就業規則では「職員の俸給はその能力と勤務に応じて支給される。給与は職務の量及び質並びに勤務責任の程度によって調整される。」と定められ、給与規程において、職員に支払う賃金は、「本人給」と「職能給」で構成されるとし、本人給は「職員の生活保障的性格を目的とし、調整生計費及び職員の年齢を考慮した本人給表により支給する」としている。 同銀行は本人給表を毎年改訂しているが、42~43年度は(1)表、(2)表、44年度はA表、B表にわかれ、扶養家族の有無にかかわらず、男子行員には(1)表、A表を、女子行員には(2)表、B表を適用し、各表の年齢に応じた額が支払われていた。(2)表又はB表は、(1)表またはA表に比べ、年齢26才以降は上昇率が低下し、各年齢ごとに序々に差額を拡大しながら、定年に達するまで一貫して低額の支払い額が定められていた。 45年度には、同銀行は、扶養家族を有する男子行員には(1)表に掲げる金額を年齢に応じて支払い、扶養家族のない男子行員と、女子行員全部に(2)表に掲げる金額を年齢に応じて支払ったが、扶養家族のない男子行員には調整給を支払っており、結局(1)表と同額の金額が本人給として支払われていた。 原告らは、原告らが(2)表またはB表により支給された賃金と、同一年齢の男子行員が(1)表又は、A表により支給された賃金との差額の支払を求めたものである。
- 主文
- 被告は、原告Aに対し金313,372円、同Bに対し金262,174円、同Cに対し金262,174円、同Dに対し金93,258円、同Eに対し金54,068円、同Fに対し金54,068円、同Gに対し金5,280円および右各全員に対する昭和46年7月16日から支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え。 原告Gを除く原告らのその余の請求はいずれもこれを棄却する。 訴訟費用は被告の負担とする。
- 判決要旨
- 男女別賃金表あるいは、扶養家族手当の有無による別賃金表を設定し、扶養家族のない男子行員には調整給を支払ったことは、他に特段の事情が認められない限りは、被告において、原告らが女子であることを理由として賃金について、男子と差別的取扱をしたものであると推認でき、被告の右推認をくつがえすに足りる根拠はなく、女子について男子と差別的扱いをしたものである。労働契約において、使用者が、労働者が女子であることを理由として賃金について男子と差別的取扱いをした場合は、労働契約の右部分は労働基準法4条に違反して無効であるから、女子は男子に支払われた金額との差額を請求することができる。 労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とされ、この無効となった部分は、労働基準法で定める基準による旨の労働基準法13条の趣旨は、同報4条違反のような重大な採用違反がある契約については、より一層、この無効となった空白の部分を補充するためのものとしてすることができるものとみなさなければならない。
- 適用法規・条文
- 07:労働基準法4条,07:労働基準法13条
- 収録文献(出典)
- 判例時報778号頁
- その他特記事項
- なし。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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