判例データベース
O社地位保全等仮処分申請事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- O社地位保全等仮処分申請事件
- 事件番号
- 盛岡地裁 − 一ノ関支部昭和41年(ヨ)第6号
- 当事者
- その他申請人 個人一名
その他被申請人 O株式会社 - 業種
- 製造業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1968年04月10日
- 判決決定区分
- 全部認容(申請人勝訴)
- 事件の概要
- 申請人はO株式会社に昭和20年4月から雇用されていた。
会社は経営悪化のため人員整理をすることとなり、昭和40年12月3日希望退職をつのった。募集方法として、同年11月2日組合に提示された希望退職者募集基準に従い、120名に対し、退職勧告を行うこととなった。上記退職基準には、「有夫の女子など」があった。
会社は、イ申請人の担当職務が他の課員が分担することができ、会社再建に不可欠な従業員でないことロ夫が司法書士をしていて退職しても比較的経済的に困らない立場にあるとして、上記退職基準に該当する申請人に対し、勤労課長より、口頭で2回希望退職の勧告を行った。
12月15日に、同月18日までに希望者が予定数に達しない時の指名解雇の実施とその基準が発表された。その基準は、前記希望退職基準の「有夫の女子など」を「有夫の女子または30歳以上の女子」と細目化したものであった。
申請人は12月18日に退職願を出した。その後、退職の意思表示を撤回したが、会社は、同年12月18日付の退職辞令を交付して以後、申請人の就労を拒否している。そこで申請人は地位保全をもとめて仮処分を申請した。 - 主文
- 申請人が被申請人に対して雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。
被申請人は申請人に対し昭和41年1月から本案判決確定に至るまで毎月25日かぎり金34,490円をかりに支払え。
訴訟費用は被申請人の負担とする。 - 判決要旨
- 希望退職勧告は、合意解約申込の意思表示であり、退職願の提出により、合意解約は成立している。人員整理の方法と内容には一定の制約があるものというべきであり、その整理は可能な限り最小限にとどめるときで、かつ合理的な内容を有するものでなければならない。このような意味で整理解雇基準として考慮さるべきものは、
イ企業の能率的運営の必要、ロ個々の労働者の能力、経験、技能及び職業的資格
ハ勤続年数ニ年齢ホ家族の状況ヘその他社会的に適当として考えられる基準ということができるであろう。本件人員整理は、やむを得ない程度、方法であるが、希望退職募集基準に「有夫の女子」「30歳以上の女子」という一般的退職基準を設けることは、結婚している女子の差別的待遇に該当するといえるから、いずれも憲法14条、労働基準法3条、4条の精神に違反し、かかる性別に基づく法律行為は私法上無効であるといわねばならない。指名解雇基準と申請人の退職願提出は、密接不可欠分の関係にあったといえる。違法な指名解雇基準と密接不可分の関係に立って成立した合意解約ということができ、結局かかる合意解約は、公序良俗に反し私法上無効であるといわねばならない。 - 適用法規・条文
- 01:憲法14条,07:労働基準法3条,07:労働基準法4条
- 収録文献(出典)
- 労働関係民事裁判例集19巻2号522頁、
斎藤忠昭・労働法律旬報686号25頁 - その他特記事項
- 本件は控訴された(No.47)。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
盛岡地裁 − 一ノ関支部昭和41年(ヨ)第6号 | 全部認容(申請人勝訴) | 1968年04月10日 |
仙台高裁 - 昭和43年(ネ) 第166号 | 原判決取消(控訴人勝訴) | 1971年11月22日 |