判例データベース

J医大病院地位確認請求事件

事件の分類
配置転換
事件名
J医大病院地位確認請求事件
事件番号
東京地裁 − 昭和51年(ワ)第1244号
当事者
原告 個人1名
被告 学校法人J医大学
業種
サービス業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1979年04月24日
判決決定区分
請求棄却(原告敗訴)
事件の概要
原告は被告J大学附属病院本院の看護婦として採用され、本院の外科病棟に配属された後、原告の希望により、本院の本館手術室に配属されて、同手術室での看護業務に従事していた。その後、妊娠した原告は、産前休暇、産後休暇を取り、引き続き6ヶ月間育児のために休職を経て復職したところ、本院の総婦長は、原告に対し、原告を本院の本館歯科外来診療室へ配転する旨の命令を発した。本件はこれに対し、原告が本件配転命令は、就業規則の解釈、運用を誤ったものであり、また人事権を著しく濫用したものであって、違法、無効であるとして、引き続き手術室に勤務する権利を有することの確認を求めたものである。
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
判決要旨
原告が同病院の看護婦として採用された際に、原、被告間には、原告の専属科目や勤務場所についての特約は全くなかったので、原告は、採用の際に、その後に行われるべき少なくとも本院内での各科や各勤務場所への配置転換については、それが業務上の必要等に基づくものであり、かつ、それを違法または不当とすべき特別の理由のない限り、これに応ずることを少なくとも黙示に承諾していたものと解される。従来からの慣行として、看護婦等が産前休暇に入ると、その時点から当然に、その所属を変更してそれまでの勤務場所から総婦長室に配転し、その結果看護婦等が減員となったそれまでの勤務場所には、その後、業務の必要等に応じて可及的に他の看護婦等を補充配置し、産前休暇に入った看護婦等がその後出産及び産後休暇等を終了して復職する際には、総婦長がその新しい勤務場所を指定するという措置をとっており、原告についても、右の慣行に従い、右と同様の措置がとられた。被告大学の附属病院における右慣行は、病院の社会的使命や、総婦長の権限、職責等に照らして、客観的な合理性のある慣行であったというべきであり、これを違法または不当とすべき理由は見出しがたい。したがって、また、その慣行に従い原告に対してなされた、本院総婦長室付への配転の措置についても、これを違法または不当とすべき理由は考えられない。
そうすると、原告は、産前休暇に入ると同時に、本院総婦長室への配転の措置により、手術室に勤務する権利を失うに至ったものというべきであって、その後になされた本件配転命令の効力の有無を問題にするまでもない。
適用法規・条文
99:なし
収録文献(出典)
労働経済判例速報1015号19頁、労働判例325号45頁
その他特記事項
昭和56年12月17日東京高裁判決同旨(No.84)参照。
昭和58年3月8日最高裁判決上告棄却(No.85)参照。