判例データベース
横浜建設会社事件
- 事件の分類
- セクシュアル・ハラスメント
- 事件名
- 横浜建設会社事件
- 事件番号
- 横浜地裁 − 平成4年(ワ)第2024号
- 当事者
- 控訴人 個人1名
被控訴人 株式会社A建設
被控訴人 株式会社B
被控訴人 個人1名C - 業種
- 建設業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1995年03月24日
- 判決決定区分
- 請求棄却(原告敗訴)
- 事件の概要
- 本件は、被告である株式会社Bに勤務していた女性従業員である原告が、被告であるA建設株式会社から被告B会社に出向していた上司の被告Cが、(1)原告の席の近くを通るときに原告の肩をたたいたり、頭髪をなでるようになったこと、(2)原告が腰を痛めたとき、腰を触ったこと、(3)事務所内で2人になったとき肩を揉んだり頭髪を弄んだりしたこと、(4)2人で外出したときに「今日はありがとね」と言いながら肩を抱き寄せたこと、(5)事務所で2人になったとき、原告の後方から抱きつき、服の下に手を入れて胸や腰をさわり、口を開けさせ舌を入れようとしたり、腰を密着させて原告のズボンの上から指で下腹部を触ったりした上、その行為から逃れようとした原告に20分もの間、執拗にこのような行為を継続したこと、(6)3日後に(5)の行為を認めて謝罪したものの、それを後に否定し、その事実を原告から告げられた被告B会社代表取締役から叱責されたのちは、原告に仕事をさせないようになり、原告を退職に追い込んだとして、また、被告B会社が被告Cに対する適切な処分等を行わなかったことが原因で、被告B会社を退職せざるを得なくなり、性的自由、働く権利及び名誉を侵害されたとして、被告Cに対して不法行為に基づく損害賠償を、被告B会社に対して使用者責任又は同被告自身の不法行為に基づく損害賠償及び謝罪広告の掲載を、被告A会社に対して使用者責任に基づく損害賠償及び不法行為を原因とする謝罪広告の掲載をそれぞれ求めた事実である。
- 主文
- 一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 原告主張に係る被告の行為(強制わいせつ行為に比類すべき行為)に沿う前記原告の供述は到底信用することができないし、他に右主張事実を認めるに足る証拠はない。右認定に係る被告の行為(前から両手を原告の背中に回して原告を抱き締めた)が原告に対する不法行為を構成するほどの違法性を有するものでないことは、右行為に至る経緯等で認定した内容自体から明らかである(なお、被告は前記のとおり、右行為について再三にわたり謝罪しているし、これに対して原告自身も、被告を宥恕する気持ちを窺わせる言動すら採っていることなどに照らすと、右の行為自体は、既に解決済みであると認めるのが相当である。)。第6の事実(強制わいせつに比類すべき行為を認め、謝罪後これを否定し、被告B会社代表取締役から叱責された後、原告に仕事をさせず、原告を退職に追い込んだ)については、本件全証拠によっても、被告が原告に対して、仕事上の嫌がらせしたこと及びこれによって原告を退職に追い込んだとの事実を認めることはできない。被告の原告に対する行為は(前から両手を原告の背中に回して原告を抱き締めた)、行為自体が極めて軽微であって、不法行為を構成する程のものではなかった上、原告から直訴を受けた訴外(被告B会社代表取締役)Dは、被告の言い分を十分に聴き、さらに、被告から事情を聴取したのち、同被告に対し、原告への再三の謝罪を命じてこれを履行させているのであるから、被告会社らがそれ以上に、被告に対する何らかの処分及び事実の公表等の措置を採らなかったとしても、そのことが違法であるとは到底いえない。したがって、被告会社らに原告指摘に係る不法行為責任を認めることはできない。
- 適用法規・条文
- 99:なし
- 収録文献(出典)
- 判例時報1539号111頁、労働判例670号20頁
- その他特記事項
- 本件は控訴された。(No.98)
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
横浜地裁 − 平成4年(ワ)第2024号 | 請求棄却(原告敗訴) | 1995年03月24日 |
東京高裁 - 平成7年(ネ) 第1474号 | 原判決変更(控訴人一部勝訴) | 1997年11月20日 |