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K社異動命令無効確認等請求上告事件

事件の分類
配置転換
事件名
K社異動命令無効確認等請求上告事件
事件番号
最高裁 − 平成8年(オ)第128号
当事者
上告人 個人 1名
被上告人 株式会社K
業種
製造業
判決・決定
判決
判決決定年月日
2000年01月28日
判決決定区分
上告棄却(上告人敗訴)
事件の概要
上告人は、昭和50年に被上告人である株式会社Kに雇用された女性である。約7年間通信機器製造に携わった後、昭和60年から上告人は目黒区の事務所において、庶務の仕事に従事していたが、昭和63年1月、八王子事業所の製造ライン勤務に異動を命ぜられた。

上告人は当時3歳の男児を保育園に預けながら勤務していて、異動すると通勤時間は1時間40分以上となり、勤務を継続できなくなる、として、異動命令を拒否して出勤しなかったところ、停職処分となり、その後も欠勤に準じる行為が68日にも及んだ、として懲戒解雇処分となった。(その際、会社は2回、出勤するよう警告した、と主張した。)

そこで、上告人は被上告人に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、八王子事業所に勤務する義務のないことの確認、停職処分の無効確認、昭和63年4月から平成5年夏期分までの賃金等を求めて、提訴した。東京地裁は請求を棄却した。これに対し、上告人が控訴し、東京高裁は控訴棄却した。本件は、上告人がこれに対し、上告した事件である。
主文
本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。
判決要旨
原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、是認することができ、その過程に違法があるとはいえない。右事実認定に係る論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。本件においては、被上告人は、個別的同意なしに上告人に対し東京都に所在する企画室から八王子事業所へ転勤を命じて労務の提供を求める権限を有するものというべきである。又、上の必要性があり、これが不当な動機・目的をもってされたものとはいえない。また、これによって上告人が負うことになる不利益は、必ずしも小さくはないが、なお通常甘受すべき程度を著しく超えるとまではいえない。したがって、他に特段の事情のうかがわれない本件においては、本件異動命令が権利の濫用に当たるとはいえないと解するのが相当である。
適用法規・条文
07:労働基準法2章、89条1項9号
収録文献(出典)
裁判所時報1260号8頁 判例時報1705号162頁 判例タイムズ1026号91頁 労働判例774号7頁 労働経済判例速報1722号26頁
その他特記事項
no.89事件、no.90事件 参照。