判例データベース
大阪運送会社事件
- 事件の分類
- セクシュアル・ハラスメント
- 事件名
- 大阪運送会社事件
- 事件番号
- 大阪地裁 − 平成6年(ワ)第13302号
- 当事者
- 原告個人1名
被告個人1名 - 業種
- 運輸・通信業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1995年08月29日
- 判決決定区分
- 一部認容(控訴)
- 事件の概要
- 原告は、平成6年3月に高校を卒業し、4月からA運送店に雇用された女性であり、被告はA運送店の代表者である。原告の父はかつてA運送店に勤務し、退社後間もなく死亡したが、被告は原告の母の依頼を受けて原告を雇用した。
被告は、原告が入社間もない4月、原告を車で自宅まで送ったが、その際原告に対し「○子ちゃんは処女か。」「今まで彼氏おったんか。」等と尋ね、原告が「イヤー。」と言うと、「ふーん○子ちゃんは処女なんか。」と言った。その後、被告は原告と事務所で2人になると、原告に「B高の女の子は悪いからなー。」「平気で俺にお金が欲しいと言って来る。」「AVのビデオを見たことがあるか。」等と言った。また被告は4月下旬頃原告を食事に誘った帰り、被告の運転する車の中で、「○子ちゃんはしたことないねんなー。」「B高の生徒にしては珍しいなー。」等と言った。
同年7月、被告は原告を食事に誘った際、「わし、○子ちゃんが欲しいねん。」「恥ずかしいんか、ホテルに行っても暗いからわからへん。」等と言い、原告が拒否しても、「○子ちゃん彼氏ができようが、結婚しようが、わしは何も言えへんから頼むわ。」「今金あんまり持ってないから明日持ってくるから。」等と言った。また自宅に送った際も「考えといて。」「お母さんには内緒にしといてくれ。」と言った。原告は帰宅後食事ができず、翌日は仕事を休んで診察を受け、同日以降出勤できなくなり、同年8月30日A運送店を退職した。
原告は、被告の行為により精神的苦痛を受けたとして、慰藉料150万円を要求した。 - 主文
- 1 被告は原告に対し、金50万円及びこれに対する平成6年9月1日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを3分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
4 この判決1項は、仮に執行することができる。 - 判決要旨
- 被告は原告の意思を無視して性的嫌がらせと言うべき言動を繰り返し、原告を困惑させて、結局退職させる結果を招いたものであって、被告は原告の勤める会社の代表者であり、同社は被告の個人企業ともいうべき中小企業であるから、代表者である被告は率先してその職場環境の維持改善を図るべきであるにもかかわらずこれを怠るばかりか、積極的に悪化させたものである。原告は母子家庭で、高校を卒業し初めて社会人としての生活を始めたばかりの18歳の女性で、父がかつて勤務していた関係でようやく就職できた会社であったこと等の事実を考慮すると、一連の被告の行為は、原告の人格権の侵害であるということができる。そして、原告にとって、被告の言動は相当の精神的苦痛を与えたものであり、被告としては、かかる一連の言動により、原告に相当の精神的苦痛を与えるものであることを十分に予見し得たものというべきである。
原告は、被告の言動により、相当の精神的苦痛を感じ、欠勤さらには退職するに至り、初めてついたその職を失ったこと、本件の被侵害利益が女性としての尊厳に係わるものであること等諸般の事情を考慮すると、原告が被った精神的苦痛は相当のものであり、この精神的損害に対する慰謝料の額は金50万円をもって相当と認める - 適用法規・条文
- 民法709条
- 収録文献(出典)
- 判例タイムズ893号203頁
- その他特記事項
- 本件は控訴された。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|