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F産業懲戒解雇事件

事件の分類
セクシュアル・ハラスメント
事件名
F産業懲戒解雇事件
事件番号
大阪地裁 − 平成16年(ワ)第8659号
当事者
原告個人1名

被告F産業株式会社
業種
サービス業
判決・決定
判決
判決決定年月日
2005年08月26日
判決決定区分
一部認容・一部棄却
事件の概要
 被告は、派遣スタッフである女性Aから、「原告から、就業後、無理やり飲食への同行を求められ、やむなく1度同行したが、その際身体に接触された」との訴えを受けた。Aは被告による事実確認に際し、「仕事中に平静を装うのに疲れた」と、涙目で唇を震わせながら訴え、そのまま出勤しなくなった。被告は、事実関係についての調査の結果、原告によるAに対するセクシャルハラスメントがあったと判断し、原告を懲戒解雇したところ、原告はこの処分を不当として、解雇無効による従業員としての地位確認を請求するとともに、本件解雇によって精神的苦痛を受けたとして、被告に対し慰謝料を請求した。
主文
判決要旨
 Aの苦情のうち、原告のAに対する他の行為については、その一部のものには適切さを欠くところがあったことが窺えるが、いずれも原告が性的な意図をもって当該行為をしていたとは認められず、懲戒解雇に値するほどのものであったとは認められない。またAの訴える接触行為については、仮に原告がスナックにおいてAの身体に性的な意図をもって接触していたとしても、それはAが嫌がったにもかかわらず何度も頭や肩に触ったという行為を超えるものではないと認められる。なるほど、嫌がる女性が受けた恐怖心ないし被害感情やそのことによって生じる職場規律の乱れ等を軽視することはできないが、その接触した部位や、それが1度の食事の機会に行われたのみであることを考慮すると、仮に原告がそのような接触行為に出たからといって、直ちに同人を懲戒解雇することが相当であるとは認められず、本件解雇は有効に行われたとは認められない。
 他方、被告は事実関係について一応の調査を行い、Aに事実関係を確認した際の同人の言動を考慮した上で、原告に懲戒解雇に値するようなセクシャルハラスメントがあったものと考えて、本件解雇を行ったものであり、Aが被告の従業員ではなく派遣従業員であり、被告が行い得る調査の範囲には限界があったと考えられることを考慮すると、被告が本件解雇を行ったことについて慰謝料等を認容するに足りるような違法性があったとまではいうことができない。
適用法規・条文
なし
収録文献(出典)
平成18年版 労働関係判例命令要旨集p.291
その他特記事項