判例データベース
T社配転拒否懲戒解雇控訴事件
- 事件の分類
- 配置転換
- 事件名
- T社配転拒否懲戒解雇控訴事件
- 事件番号
- 大阪高裁 − 昭和57年(ネ)第2028号
- 当事者
- 控訴人(附帯被控訴任) 株式会社
被控訴人(附帯控訴人) 個人1名 - 業種
- 製造業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1984年08月21日
- 判決決定区分
- 控訴棄却
- 事件の概要
- 被控訴人(第1審原告)は、昭和40年4月に控訴人(第1審被告)に入社し、神戸営業所において営業担当主任の地位にあった。控訴人は瀬戸内地区の営業力の強化のため、広島駐在員を置くこととし、その関連で被控訴人を広島営業所の主任Aの後任とすべく内示をしたが、被控訴人が家庭の事情等を理由に拒否したため、名古屋営業所の主任Bを広島営業所に充て、被控訴人をBの後任として名古屋営業所の主任に発令したところ、被控訴人は転勤を拒否し、名古屋に赴任しなかったため、控訴人は被控訴人を解雇した。これに対し被控訴人は、当初の労働契約で勤務地を大阪とする合意があったこと、家庭の事情から名古屋への転勤は不可能であり、本件転勤命令は人事権の濫用であって、これを拒否したことを理由とする解雇は無効であるとして、従業員としての地位の確認と賃金の支払を請求した。
第1審では、労働契約上勤務地を大阪とする合意があったことは否定し、使用者は業務上の必要性がある限り、従業員の承諾がなくても一方的に転勤させることができるとの考え方を示したが、本件の名古屋への転勤は被控訴人でなければならない理由がないこと、被控訴人の家庭環境からみて本件転勤命令は被控訴人にとって犠牲が大きすぎること等の理由を挙げて、被控訴人の主張を全面的に容認したため、控訴人はこの判決を不服として控訴したものである。なお、被控訴人は、控訴人が原判決に従わず、被控訴人を就労させないことから、被控訴人は甚大な精神的苦痛を受けたとして、控訴人に対し慰藉料300万円、弁護士費用300万円を新たに請求した(附帯控訴)。 - 主文
- 本件控訴及び附帯控訴を各棄却する。
控訴費用は控訴人の、附帯控訴費用は被控訴人の各負担とする。 - 判決要旨
- 当裁判所の認定及び判断は一部付加、訂正、削除するほか原判決と同一である。
控訴人が被控訴人の経歴等を考えて広島営業所主任Aの後任に充てようとしたことは、一面において、あながち不当とはいえない。控訴人は被控訴人が右転勤に応じなかったため、名古屋営業所の主任Bを広島営業所に配転させたのであるが、右経緯に照らすと、Bの配転をもって、もっぱら被控訴人を名古屋営業所へ転勤させるための方策であったことは認め難い。
原判決説示の通り、本件転勤命令が控訴人の業務上の必要性に基づくものであることは肯認されるべきである。しかしながら、控訴人は、昭和48年1月の大阪工場爆発事故後、会社再建の一方策として汎用品塗料の販売を重点的に行う計画をたてたが、右事故並びに石油ショックによる原材料不足等のため供給薄で、拡販は到底期待し得なかったこと、名古屋営業所は、同地区に専門メーカーがあったため従来から汎用品塗料の販売実績は極端に悪く、Bの担当していた3社においても汎用品塗料の拡販は不可能に等しかったこと、同営業所の昭和48年下期の汎用品塗料の販売数量は5トンに減少しているが、他の各営業所においても昭和48年度下期、昭和49年度上期と汎用品塗料の販売数量は減少傾向にあること、右は供給不足或いは景気の低落によるものであること、同営業所の昭和48年下期から昭和50年上期に至る全体の営業成績は他の営業所に比べ決して劣っていないこと等が認められるのであって、これらの事実に照らすと、Bの後任には被控訴人を置いて他に適切な者がいなかったと認めることはできない(但し、当裁判所は、いわゆるローテーション人事が直ちに不当と考える訳ではない)。
当審における証拠調の結果によっての原判決の認定、説示を覆すことはない。
被控訴人の当審における新請求を容認すべき証拠はない。 - 適用法規・条文
- なし
- 収録文献(出典)
- 労働判例477号15頁
- その他特記事項
- 本件は上告された。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
大阪地裁 − 昭和52年(ワ)第6261号 | 一部認容・一部棄却 | 1982年10月25日 |
大阪高裁 − 昭和57年(ネ)第2028号 | 控訴棄却 | 1984年08月21日 |
最高裁 − 昭和59年(オ)第1318号 | 原判決破棄・差戻し | 1986年07月14日 |