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K航空客室乗務員雇止め控訴事件

事件の分類
雇止め
事件名
K航空客室乗務員雇止め控訴事件
事件番号
東京高裁 − 平成12年(ネ)第2577号
当事者
控訴人 個人12名(女性9名、男性3名)
被控訴人 航空会社
業種
運輸・通信業
判決・決定
決定
判決決定年月日
2001年06月27日
判決決定区分
一部変更(上告)
事件の概要
 控訴人(第1審原告)ら12名は、被控訴会社(第1審被告)に昭和62年9月から平成5年4月まで、期間の定めのある契約社員である客室乗務員として勤務していたが、被控訴会社が平成9年から10年にかけて期間満了をもって雇用契約が終了したとして、本件雇止めを行った。そこで控訴人らは、解除条件に該当しない限り雇用契約は継続することが前提になっているから、本件雇止めには解雇の法理が適用ないし類推適用されると主張して、従業員としての地位の確認と賃金の支払いを請求した。

 第1審では、本件雇止めの効力につき、解雇の法理が適用されるか、同法理が類推適用されるかの両面から判断し、同法理の適用については、原告らの2つのグループ(日本ベース客室乗務員とオーストラリアベース客室乗務員)のいずれについても、期間の定めのある契約による雇用であったと認定し、その適用を否定した。また同法理の類推適用については、「期間の定めのある雇用契約において被用者が契約期間の満了後も雇用関係の継続を期待することにある程度の合理性が認められる場合には、そのような契約当事者間の信義則を媒介として、雇止めについて解雇の法理を類推すべきである」としつつ、本件においては原告らが期間満了後なお雇用関係の継続を期待することに合理性があるとはいえないとして請求を棄却したため、控訴人らはその取消しを求めて控訴した。
主文
1 原判決を次の通り変更する。
(1)控訴人らが被控訴人との間の労働契約上の地位にあることを確認する。
(2)被控訴人は、控訴人らに対し、それぞれ別紙債権目録の控訴人氏名欄記載の控訴人らに対応する賃金欄記載の各金員及びこれに対する平成10年6月26日から支払い済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(3)控訴人A及びIを除く控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人の負担とする。
判決要旨
1 本件雇用契約の性質及び解雇の法理の適用ないし類推適用の有無

 控訴人らと被控訴会社との契約は、雇用期間を1年とし、更新の期間を5年間と区切った期間の定めのある雇用契約であるというべきであるから、本件雇止めについて解雇に関する法理が適用されるべきであるという控訴人らの主張は、採用することができない。しかし、期間の定めのある契約であっても、期間の満了毎に当然更新を重ねて実質上期間の定めのない契約と異ならない状態にあり、採用、雇止めの実態、仕事内容、採用時及びその後における労働者に対する使用者の言動等により、単に期間が満了したという理由だけでは使用者において雇止めを行わず、労働者もまたこれを期待、信頼し、そのような相互関係のもとに労働契約関係が存続・維持されてきたような事情がある場合には、雇止めの効力を判断するに当たっては、解雇に関する法理を類推し、経済事情の変動により剰員が生じるなど使用者においてやむを得ない事情がない限り期間満了を理由として雇い止めをすることは信義則上許されないものと解するのが相当である。

 控訴人らは被控訴会社の面接試験の際に、日本ベースは契約社員で、5年の期間の定めある雇用契約であることを知らされたが、その際「長く勤務してください」といわれたことから、5年経過後も希望すれば雇用されるものと判断し、「いつまでもフライトホステスとして働くことはできる」との説明を受けている。また、被控訴会社に採用になった控訴人らは、全員シドニーで訓練を受けたが、その際いつでもオーストラリアベースになれると説明を受けたため、全員日本ベースに移ることに同意した。

2 本件雇止めの効力

被控訴会社は、平成元年から平成5年にかけて、大幅な赤字を計上しており、その厳しい環境を踏まえて5年を限度として1年契約の雇用契約を締結した旨主張する。しかし、平成6年以降は利益が大幅に拡大していること、平成9年にはオーストラリアドルで前年より25.9%増加していることが認められる。被控訴会社の控訴人らに対する雇止めが信義則上許されるための特段の事情の有無は、当該雇止めの時点において判断すべきところ、この時期における被控訴会社の経営状況に照らせば、被控訴会社について、特段の事情があるとは認められないというべきである。

以上の通りであるから、本件において特段の事情があるものとは認められず、他に特段の事情の存在について主張立証がないので、期間が満了したということだけで本件雇止めをすることは信義則上許されないから、本件雇止めはその効力を生じないものというべきである。
適用法規・条文
なし
収録文献(出典)
判例時報1757号144頁、労働判例810号21頁
その他特記事項
本件は上告され、和解した。