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I社パートタイマー解雇事件

事件の分類
雇止め
事件名
I社パートタイマー解雇事件
事件番号
大阪地裁 - 平成13年(ヨ)第10049号
当事者
その他債権者 個人1名
その他債務者 株式会社
業種
サービス業
判決・決定
決定
判決決定年月日
2001年08月16日
判決決定区分
一部認容・一部却下
事件の概要
 債務者は、通信販売業務全般の代行等を主たる業務とする株式会社であり、債権者は、平成12年10月2日債務者に入社した女性であって、3ヶ月間は試用期間であった。

 平成13年2月8日、債務者より債権者及び同期入社者に対し、社員登用についての説明会が行われ、その際債権者は正社員になることを留保し、パート社員になった。債権者は、同月労働基準監督署に、割増賃金支給などの是正を求める申告をし、債務者は同署から、労働条件の明示、割増賃金の支払い、就業規則の届出等について是正勧告を受けた。債務者は債権者に対し、期間の定めのあるパート社員としての労働契約を締結するための話し合いを持つよう要請したが、債権者はこれに応じず、その後債務者は労働基準監督官立会いの下に債権者に対して、雇用期間を平成13年3月19日より6月18日までと記載された労働条件通知書を示し、署名押印するよう求め、債権者にこれを手渡した。
 債務者は、同年5月9日、債権者に対し、雇用契約の期間満了日である同年6月18日をもって雇用契約を終了させ、雇用契約の更新は行わないと通知した。債務者はその理由として、(1)債権者の2、3、4月の売上げがノルマの50%未満であったこと、(2)債権者は協調性がなく、周りの従業員の士気を減退させること、(3)債権者は遅刻・早退が目立つようになってきたことを挙げた。債務者は、債権者に対し、雇用契約が終了する旨を記載した通知書を交付しようとしたが債権者はこれを受領せず、同年6月18日までの賃金を振り込んだが、債権者はこれを解雇予告手当と考えて返送した。債権者は、債務者による本件解雇は不当であり、解雇権の濫用であって無効であると主張し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、賃金の支払い等を求めて仮処分申請を行った。
主文
1 債務者は、債権者に対し、平成13年7月以降第1審判決言渡しに至るまで、毎月金22万円を毎翌月15日限り仮に支払え。

2 債権者のその余の申立てをいずれも却下する。

3 申立費用はこれを10分し、その6を債権者の、その4を債務者のそれぞれ負担とする。
判決要旨
 債権者が債務者に応募する契機となった新聞求人広告には正社員募集のほか、パートの募集の記載もあるから、直ちに債権者が正社員として採用される予定であったということはできないし、債権者が試用期間経過後正社員になることを留保し、債務者が雇用契約の期間満了日と主張する日までに正社員になっていないことは、債権者も自認しているところである。しかし、債権者が債務者に入社した時点の債権者の雇用形態及び労働条件を明らかにする疎明はないし、社員登用説明会においてパート社員に雇用期間の定めあるとの説明をしたとの疎明もない。むしろ債権者は、同年3月19日に労働条件通知書への署名押印を拒否しており、これらを併せ考えると、雇用契約において、雇用期間の定めがあることがその内容になっていたと認めることはできない。

 債務者は、平成13年4月1日実施のパートタイマー就業規程において、パートの雇用契約期間は1年の範囲内とすること、但し必要に応じて契約を更新できること、更に雇用期間が満了したときは退職するとの記載があることが一応認められるが、同規程の実施時期を考えると、債権者が期間の定めあることを認識して債務者と雇用契約を締結したと認めることもできない。なお、債務者は、期間満了によるほか、業務上の理由により債権者を解雇したとも主張するが、債務者が債権者を解雇したと認めるに足りる疎明はない。また、仮に、債務者の債権者に対する期間満了による雇用契約の終了及び契約更新拒絶の通知に、債務者の債権者に対する解雇の意思表示が含まれていたと解したとしても、解雇を相当と認めるに足りる疎明はない。したがって、以上のことからすれば、雇用契約に定める期間満了を理由として債権者が債務者を退職したと認めることはできないし、債務者が債権者を解雇したと認めることもできないから、被保全権利の存在が認められる。
適用法規・条文
なし
収録文献(出典)
労働経済判例速報1784号14頁
その他特記事項