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K病院看護助手配転命令等事件

事件の分類
配置転換
事件名
K病院看護助手配転命令等事件
事件番号
徳島地裁 − 昭和58年(ヨ)第135号
当事者
その他申請人 個人3名 A、B、C
その他被申請人 個人1名
業種
サービス業
判決・決定
決定
判決決定年月日
1984年02月09日
判決決定区分
認容
事件の概要
 申請人Aは昭和55年9月から、申請人Bは昭和54年4月から、いずれも看護助手として本件病院に採用された女性である。看護助手の職務は、看護婦ないし准看護婦の看護補助業務をなすものであり、その具体的内容は、第1に観察記録の記載、検温などの看護婦業務自体の代行及び投薬介助などの看護補助的業務、第2に入院患者の日常生活指導、レクリエーション指導などの患者指導業務、第3に食事介助、入浴介助、おしめ交換などの患者の介助業務の3種に区分されていた。

 被申請人は、昭和58年6月11日、申請人A及び申請人Bに対し、同月20日以降、停年を超過してから採用され雑役業務に従事するM、Nと同様に早出を含む洗濯、清掃等の雑役業務に配転した。これに対し申請人らは、看護助手として採用されたものであり、その業務には洗濯、掃除等の雑役は含まれていないから、本件配転命令は無効であるとして、その効力停止を求めた(甲事件)。
 また、被申請人は、正看護婦で組合委員長である申請人Cを就業規則違反があったとして懲戒解雇したことから、申請人Cは従業員としての地位の保全を求めた(乙事件)。
主文
1 被申請人が、昭和58年6月11日付でなした甲事件申請人A及びB両名に対する別紙処分目録記載の処分の効力を停止する。

2 被申請人は、乙事件申請人の経営に係る鴨島中央病院の従業員として取り扱い、かつ、昭和58年7月から本案訴訟第1審判決言渡しに至るまで毎月25日限り1箇月金15万930円の割合による金員を支払え。
3 申請費用は、被申請人の負担とする。
判決要旨
1 甲事件について

 被申請人は、本件配転処分は、本来看護助手の労働契約上の職務に含まれている洗濯、掃除等の業務及び早出勤務を命ずるものであり、労働契約の履行過程における使用者の具体的指示に過ぎず労働契約の内容を変更する法律行為ではないと主張する。しかしながら、申請人A及び申請人Bは看護助手として看護補助的業務、患者指導業務、患者介護業務等の職務に従事することを労働条件の限定的な内容として雇用され、右業務に従事してきたところ、本件配転処分は、申請人両名を従来M、Nのみが担当していた洗濯清掃等の雑役業務に配置転換し、右4名が1週間交替で早出出勤することを命ずるものであると認められる。そうすると、右処分は、看護助手として看護行為に準ずる業務に従事することを労働条件の限定的な内容として雇用された労働者を、高齢者でもなし得る比較的単純な肉体的雑役的労務に配置転換し、かつ勤務時間上も就業規則に定めのない不利益を及ぼすものであるから、労働契約の重要な内容の一部を不利益に変更する法律行為であり、当該労働者の同意又は右配置転換等を合理的なものと首肯し得るに足りる業務上の正当な事由が存しなければ、法的に無効なものと解するべきである。しかして、右申請人が本件配転処分に同意していないことは明らかであり、処分を首肯し得るに足りる業務上の正当な事由は疎明がない。したがって、本件配転処分は無効なものである。

2 乙事件について (略)
適用法規・条文
なし
収録文献(出典)
労働判例431号117頁
その他特記事項