判例データベース
N会臨時従業員雇用契約更新拒絶事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- N会臨時従業員雇用契約更新拒絶事件
- 事件番号
- 東京地裁 − 昭和48年(ワ)第1576号
- 当事者
- 原告 N会
被告 個人4名 A、B、C、D - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1974年10月30日
- 判決決定区分
- 認容
- 事件の概要
- 被告Aは、昭和47年1月12日に、被告B及び被告Cは、いずれも同月19日に、被告Dは昭和46年12月15日に、いずれも雇用期間を昭和47年3月31日までとする臨時筆生(アルバイト)雇用契約を原告との間で締結した女性である。
被告らの雇用契約は、昭和47年3月31日に終了したが、被告らは、本件雇用契約は原告の正規職員以外の大量の労働力需要を充たすために締結されたものであり、契約期間が満了したとき以後においても労働者の過剰状態が生じない限り被告らとの雇用契約関係の継続を期待し、原告らも継続雇用を期待していたものであるから、契約更新拒絶の意思表示をしない限り本件契約は同一の条件をもって更新される旨の黙示的合意が成立したものというべきところ、原告は更新拒絶の意思表示をしなかったとして、雇用契約の継続を主張し、同年4月1日以降も原告の建物に立ち入るなどして雇用関係の終了を争っていることから、原告は、被告らとの雇用関係の不存在の確認を求めて提訴した。
被告らは、本件更新拒絶は被告らが中心となって組合活動を続けたことを動機としてなされた不当労働行為であること、被告らは正規職員と同じ職務を誠実に処理してきたものであるから、本件更新拒絶は信義則に違反するものであると主張した。 - 主文
- 1 原告と被告らの間に雇用契約関係が存在しないことを確認する。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。 - 判決要旨
- 本件各雇用契約締結当時、原告はその業務の遂行につき正規職員以外の労働力を必要としていたこと及び本件各雇用契約はその需要を充たす目的をもって締結され、雇用期間満了時においてもその需要が消滅していなかったことが認められるが、だからといって直ちに当然に契約が更新されるべき黙示的合意があったものと解するのは相当ではない。かえって、被告ら臨時筆生の担当職務の内容は比較的単純かつ機械的な事務の処理であって、そのためその採用方法は、正規職員が厳重な方法をとっているのに対し、被告ら臨時筆生の場合は単に高卒40歳までの女子であれば足り、新聞広告の応募者に対し各課の係長が面接し採用を決定しているに過ぎないこと、また原告の従来のこの種臨時労働者の実態についてみても、昭和31年頃から事務量の増加に職員の定員が伴わず、かつ所要数の臨時労働者も確保できなかったことから、既に雇用している臨時労働者との契約を反覆更新することによってその需要を賄ってきたこと、ところが昭和42年頃になって、継続雇用されてきた臨時労働者から正規職員登用等の要求が出されるに至ったため、原告は臨時労働者に採用試験を受けさせ、受験しない者、不合格者は昭和43年3月31日限りで退職させた。その後原告は約定の雇用期間満了によってその身分を喪失した臨時労働者について雇用契約を更新した例はない。右のような事情があるため、原告は、被告らを臨時筆生に採用するに当たって被告らに交付した案内書、雇用通知書等には雇用期間を明記しているし、雇用期間満了後に契約が更新されるであろうことを期待してはならない旨説明していることが認められるのであって、原告は当初から本件各雇用契約を更新する意図はなかったのであるし、被告らの採用に当たり、原告側に被告らに対し各契約の更新を期待させるがごとき言動ないしその他の客観的事情があったと認めるに足りるものはない。のみならず、被告らは雇用契約が終了すると思っていた旨供述しているし、団交の席上においても、更新に関する合意の存在が主張されたこともなく、都労委に対しなされた斡旋申請においても、その申請事項は「再契約」であり、組合自体も雇用期間を前提とし、その撤廃のための運動を展開してきた事実が認められるのであって、この事実によれば被告ら自身も本件各雇用契約締結の当初において、既に右雇用契約はその期間満了後に当然更新されるものと考えていたとは認め難いから、被告らが主張する黙示的合意の存在を肯認し得ない。
- 適用法規・条文
- なし
- 収録文献(出典)
- 労働判例214号53頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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