判例データベース
I会K病院配置転換拒否控訴事件
- 事件の分類
- 配置転換
- 事件名
- I会K病院配置転換拒否控訴事件
- 事件番号
- 東京高裁 − 昭和57年(ネ)第1866号
- 当事者
- 控訴人(附帯被控訴人) 財団法人
被控訴人(附帯控訴人) 個人2名A、B - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1985年04月24日
- 判決決定区分
- 控訴一部認容・一部棄却
- 事件の概要
- 控訴人(附帯被控訴人・第1審被告)は、病院を経営する法人であり、被控訴人(附帯控訴人・第1審原告)A及びBは、同病院に勤務する従業員であり、両者は内縁の夫婦関係(A=夫、B=妻)にあった。
被控訴人Bは、職業病に認定されたことから被控訴人Aとともに控訴人に対し慰謝料の支払い等を請求したところ、控訴人の対応に不快感を抱き、控訴人を非難するビラを病院外で配布した。これに対し控訴人は被控訴人らを訓戒処分とすると同時に、被控訴人Aについては事務員から管理課洗濯へ、被控訴人Bについては入退院相談から購買部売店に配置転換した。被控訴人らは、本件配転は労働契約違反であること、誠実な協議なく行われたこと、業務上の必要性に基づくものではなくビラ配布等の活動に対する制裁として行われたものであることから、人事権の濫用として無効であると主張し、本件配置転換命令の無効の確認と慰謝料の支払いを請求した。
第1審では、被控訴人Aについては事務員から労務員に転換するものであり、同意なしに一方的に配転を命ずることはできないこと、被控訴人Bについては事務員としての配転であるから労働契約違反とはならないが、本件配転命令は業務上の必要もないのに実質的に懲戒処分の一環としてなされたもので、労務指揮権を不当に濫用したものとして無効であると判断したが、慰謝料の支払いは認めなかった。そこで控訴人は本判決を不服として控訴し、一方被控訴人らも慰謝料の支払いを求めて附帯控訴した。 - 主文
- 原判決中被控訴人Bに関する控訴人敗訴の部分を取り消す。
被控訴人Bの請求を棄却する。
被控訴人Aに関する本件控訴を棄却する。
本件各附帯控訴を棄却する。
控訴費用は、被控訴人(附帯控訴人)Bと控訴人との間においては第1、2審を通じ附帯控訴費用を含めて同被控訴人の負担とし、被控訴人(附帯控訴人)Aと控訴人との間においては控訴費用を控訴人の負担とし、附帯控訴費用を同被控訴人の負担とする。 - 判決要旨
- 被控訴人らは、控訴人病院に就職以来労働組合員であり、昭和53年7月から、被控訴人Aが副委員長、被控訴人Bが書記長の職にあったところ、被控訴人Bの労災認定をめぐって組合内部で対立が起こり、被控訴人らは組合を脱退した。その1週間後被控訴人らは組合に再入会を申し込んだが、これを拒絶されたことから、被控訴人Aは委員長に対し「組合が病院側と組んで自分を首にしようとしている」旨申し入れた。委員長は被控訴人病院院長に対し被控訴人らを解雇しないように申し入れたこと、控訴人病院従業員の中には被控訴人Bが労災認定を受けたことについても本人の行動からみて不信に思う者があったこと、本件配転について組合も従業員も傍観し、むしろ本件ビラが衝撃的なので被控訴人らの配転は仕方がないと思った者さえあったことが認められる。
以上認定した事実によれば、控訴人病院の従業員の相当数が、被控訴人らの関与する本件ビラの配布により自己の職場の印象が事実に反して著しく毀損されたものと認識して被控訴人らに対する不信と嫌悪の念を強く抱くこととなり、控訴人としては、被控訴人らを従来どおりの事務所に勤務させたのでは業務の運営上看過し得ない支障が生ずると判断したことには合理性があるというべきである。そうだとすれば、控訴人主張の他の配転事由について判断を加えるまでもなく、被控訴人Bに対する本件配転は、使用者の人事権の範囲内において業務上の必要性に基づいて行ったものであり、その処分には合理性があるから、被控訴人Bの人事権濫用の主張は理由がない。
よって、原判決中被控訴人Bの本訴請求を認容した部分は不当であるから、これを取り消して同被控訴人の請求を全部棄却し、控訴人の本件控訴中被控訴人Aに関する部分は理由がないから失当として棄却し、本件附帯控訴はいずれも理由がないからこれを棄却する。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
東京地裁八王子支部 - 昭和53年(ワ)第1472号 | 一部認容・一部棄却(控訴) | 1982年07月07日 |
東京高裁 − 昭和57年(ネ)第1866号 | 控訴一部認容・一部棄却 | 1985年04月24日 |