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Y大学病院非常勤職員雇止控訴事件

事件の分類
雇止め
事件名
Y大学病院非常勤職員雇止控訴事件
事件番号
仙台高裁 − 昭和61年(行コ)第2号
当事者
控訴人 個人1名
被控訴人 Y大学長
業種
公務
判決・決定
判決
判決決定年月日
1987年09月29日
判決決定区分
控訴棄却
事件の概要
 控訴人(第1審原告)は、昭和55年9月1日に被控訴人(第1審被告)に大学病院(Y大病院)記録部の非常勤職員として採用され、昭和56年3月の面接の際、任用は同年4月1日から同年9月30日までとする通知を受けて同日限り退職となった。

 これについて、控訴人と他1名は、Y大病院では非常勤職員の任用更新は慣行化しており、非常勤職員として反復任用されているときは期限の定めのない職員に転化していると認めるべきで、本件雇止めは免職処分に当たるとして、その取消しを求めた。
 第1審では、控訴人らは任用期間満了により非常勤職員としての地位を失ったとして、その請求を棄却したところ、控訴人のみがこの判決の取消しを求め、更に被告は一方的な雇止め通告により信頼を裏切り、控訴人に重大な精神的苦痛を与えたとして、慰藉料100万円を請求した。
主文
1 控訴人の控訴を棄却する。

2 控訴人の当審における予備的請求を却下する。
3 訴訟費用は控訴人の負担とする。
判決要旨
 控訴人は、Y大病院における非常勤職員の雇用の実状からみて、控訴人に対し、期限の定めのない任用をされた非常勤職員であるとする効果を認めるべきであると主張するが、非常勤職員の期限付任用については、期間の満了によって当然に退職することとされているのが法の建前であるから、法の許していない当然更新または期限の定めのない任用をされた非常勤職員であるという効果を認めることはできない。

 公務員の任用については、その要件、手続、効果等が法定されていて、当事者双方の合理的な意思解釈によってその内容を左右することは許されないものであるから、仮に期限付の任用が反覆更新されているからといって、そのために期限の定めのない任用に転換すると解することはできないし、任用更新を継続しないことが慣行に反し違法ということもできない。
 控訴人は、当審において被控訴人に対し損害賠償を予備的に請求しているが、損害賠償の責に任ずるのは国であって、行政庁たる被控訴人ではない。したがって、被控訴人は右訴の被告適格を有しないから、これを相手方とする控訴人の右訴は不適法である。
適用法規・条文
収録文献(出典)
労働判例511号81頁
その他特記事項