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労働者派遣会社解雇賃金請求事件
- 事件の分類
- 解雇
- 事件名
- 労働者派遣会社解雇賃金請求事件
- 事件番号
- 東京地裁 − 平成17年(ワ)第18120号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 株式会社 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2006年01月27日
- 判決決定区分
- 棄却(確定)
- 事件の概要
- 被告は、労働者派遣を業とする会社であり、原告は、N社の仕事をするということで被告と平成17年8月8日から同年9月30日までの労働者派遣契約を締結した者である。
原告は、同年8月8日、9日にN社の研修を受けたが、初日の研修に遅刻しながら謝罪もせず、2日目も30分遅刻し、午後の研修も30分遅れて着席した上、他社の派遣スタッフと口論になり、講師が止めに入っても原告は大声を上げ続けたことから、その日N社から被告支店に対し、原告の交替の要請があり、被告支店長は原告からも事情を確認した上、解雇の意思表示をした。
これに対し原告は、この程度のことでは解雇は許されないこと、有期雇用契約に試用期間の適用はないこと及び今回の派遣先以外に派遣すべきであることを主張し、解雇の無効と雇用期間満了までの間の賃金の支払いを請求した。 - 主文
- 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 2日間にわたる研修における原告の勤務態度や行動性格を観察して派遣先会社の者から原告が今回の派遣業務に不適当であると判断し、そのために交替の要請を被告に対してしたことには一定の合理性が認められる。そして、研修中の各時間に遅れたりしたこと、他の研修生との口論の経緯、その後の思考態度などからすると、原告については忍耐力がないように見受けられるほか、社会人としての常識的な対応に欠ける自己中心的な言動が顕著であるといわざるを得ず、今後の派遣スタッフの仕事を原告が遂行するのに被告の担当者あるいは支店長が不安を抱くのにはもっともなところがある。N社からの派遣スタッフの募集に対応して原告を同所への派遣労働者として有期雇用した趣旨からすると、被告が同人を解雇したこともやむを得ないものと考えられる。
被告のように他社との派遣基本契約に基づいて需要に応じて労働者を雇用して当該他社に派遣する会社は、有期雇用とはいっても自社の従業員として他社に派遣するもので、派遣社員の質や派遣会社の信用・評判等を維持するためにも自社の従業員を管理する必要があり、そのために契約条項により14日間の試用期間を設けているものと思われる。このような契約条項が労基法の強行法規に反するものとまでは考えられず、むしろ私的自治における契約自由の範囲内による派遣会社の合理的な対応というべきであり、濫用にわたるような試用条項の適用実態があるといった特段の事情がない以上、そのような使用の試みが有期雇用契約であるということで許されないということはできない。本件における当該雇用の趣旨や2日間の原告の勤務状況・態度に鑑みると、被告が留保解約権の行使により原告の解雇に踏み切ったことには合理性が認められるものであり、原告の主張はいずれも採用できない。 - 適用法規・条文
- 11:労働者派遣法
- 収録文献(出典)
- 労働判例909号83頁v
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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