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国立循環器病センター看護師くも膜下出血死損害賠償請求事件【過労死・疾病】
- 事件の分類
- 過労死・疾病
- 事件名
- 国立循環器病センター看護師くも膜下出血死損害賠償請求事件【過労死・疾病】
- 事件番号
- 大阪地裁 - 平成14年(ワ)第7614号
- 当事者
- 原告 個人2名
被告 国 - 業種
- 公務
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2004年10月25日
- 判決決定区分
- 棄却
- 事件の概要
- K(昭和50年生)は、平成9年4月、被告に厚生技官として採用され、被告の設置する循環器病センター(センター)において看護師として勤務していた女性である。
センターの労働時間は週40時間であり、深夜勤(午前0時30分から午前9時まで)、日勤(午前8時30分から午後9時まで)、準夜勤(午後4時30分から午前1時まで)、早出(午前7時から午後3時30分まで)、遅出(午前11時から午後7時30分まで)の5種類の勤務形態があり、これらのローテーションによる勤務シフトが組まれていて、Kは、勤務時間外に研究発表の準備等を行ったほか、新人教育も担当していた。
Kは、平成13年2月13日午後11時30分頃、勤務を終えて自宅に帰宅した後、くも膜下出血を発症し、同年3月10日死亡した。
Kの両親である原告らは、Kの死亡は過重業務によるものであるとして、被告に対し、1億4000万円の損害賠償を請求した。 - 主文
- 1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。 - 判決要旨
- (1)本件発症前1週間の業務が過重で本件発症と強い関連性を有していたものとは考えられず、また本件発症6ヶ月前までの各1ヶ月間の時間外労働は45時間を若干上回る程度であり、休日も十分に確保されていたから、Kの看護業務と本件発症との関連性は低い、(2)不規則な交替制勤務の看護業務のほか看護研究等の付随業務も行っていたことなどを総合考慮すると、Kの業務がある程度の質的過重性があったことは否定できないが、Kに高血圧を窺わせる所見はなく、業務による過重負荷を認めるに足りる積極的な医学的所見がないことからすると、質的過重性の観点からもKの病棟業務と本件発症との因果関係は認められない、(3)Kの脳動脈瘤発生・破裂につき、深夜交替制勤務の影響により睡眠時の血圧低下が起こりにくかったために脳動脈瘤の脆弱化の過程が促進され破裂に至った可能性を否定できないにしても、右前大動脈のA1に形成不全があったために脳動脈瘤が発生・成長・破裂した可能性も相当程度あるのであって、医学的見地からKの勤務先病院での業務と本件発症との間に相当因果関係があるとも認められない。
- 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- 労働判例880号186頁
- その他特記事項
- 本件は控訴された。本件は、同一の原告によって、公務災害認定請求に関する行政訴訟が提起されている(大阪地裁-平成17年(行ウ)80号、2008年1月16日判決)。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
大阪地裁 - 平成14年(ワ)第7614号 | 棄却 | 2004年10月25日 |
大阪地裁 - 平成17年(行ウ)第80号 | 一部認容・一部却下・一部棄却(控訴) | 2008年01月16日 |
大阪高裁 - 平成20年(行コ)第37号 | 原判決一部変更(一部認容・一部棄却) | 2008年10月30日 |