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地公災基金岡山県支部長(K市職員)心筋梗塞死上告事件【過労死・疾病】
- 事件の分類
- 過労死・疾病
- 事件名
- 地公災基金岡山県支部長(K市職員)心筋梗塞死上告事件【過労死・疾病】
- 事件番号
- 最高裁 − 平成3年(行ツ)第31号
- 当事者
- 上告人 地方公務員災害補償基金岡山県支部長
被上告人 個人1名 - 業種
- 公務
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1994年05月16日
- 判決決定区分
- 上告棄却
- 事件の概要
- M(昭和24年生)は、昭和43年にK市職員に採用され、生活保護ケースワーカーとして勤務していた。
昭和59年6月6日、Mは勤務を終えた後、午後6時過ぎからソフトボール大会に参加し、二塁から一気に生還した後気分が悪くなり、病因に搬送されたが、同日心筋梗塞で死亡した。
Mの妻である被上告人(第1審原告、第2審控訴人)は、Mの死亡は公務災害に当たるとして、上告人(第1審被告、第2審被控訴人)に対し、地方公務員災害補償法による公務災害認定請求をしたところ、上告人はこれを公務外とする決定(本件処分)をした。そこで被上告人は本件処分の取消しを求めて本訴を提起した。
第1審では、Mの死亡と公務との間に相当因果関係が認められないとして、請求を棄却したことから、被上告人はこれを不服として控訴した。第2審では、Mのケースワーカーとしての勤務は過重負荷があったとは認められないとしながら、日頃スポーツに余り親しんでいないMが本件ソフトボールに約1時間捕手として参加し、二塁から一気に生還したことは心筋梗塞の発症の要因となり得るものであったとして、公務災害に該当すると判断したことから、上告人はこれを不服として上告した。 - 主文
- 本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。 - 判決要旨
- 本件においてMに冠動脈の動脈硬化などの病変があったことは確定されていないところ、最初の発症の時刻と本件試合においてMが短時間内に走行して累間を1周するという心臓に多量の酸素を必要とする行為をした時刻との時間的間隔からすると、本件試合における右の行為がMの急性心筋梗塞の発症の原因となったことは否定できない。そして、他に急性心筋梗塞を発症させる有力な原因があったという事実は確定されていないことからすれば、Mの死亡の原因となった急性心筋梗塞の発症と本件試合への参加行為との間に相当因果関係の存在を肯定することができる。したがって、Mの死亡は地方公務員災害補償法にいう公務上の死亡に当たるというべきである。右と同旨の原審の判断は正当として是認することができる。
- 適用法規・条文
- 地方公務員災害補償法31条、42条、45条
- 収録文献(出典)
- 労働判例651号13頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
岡山地裁 | 棄却 | 1988年12月21日 |
広島高裁 − 平成元年(行コ)第1号 | 原判決取消(控訴認容) | 1990年10月16日 |
最高裁 − 平成3年(行ツ)第31号 | 上告棄却 | 1994年05月16日 |