判例データベース
O大学雇止事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- O大学雇止事件
- 事件番号
- 大阪地裁 − 昭和53年(ワ)第3413号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 学校法人 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1984年02月01日
- 判決決定区分
- 棄却
- 事件の概要
- 被告は付属高校・短大・大学を設置する学校法人であり、原告は守衛として昭和53年4月1日から1年間の契約で被告に雇用された者である。
被告は、昭和54年3月、同月末で期間満了となる原告の再雇用の可否について職員選考委員会で検討した結果、原告の人格適性に問題があり、勤務成績や同僚との関係も悪く、改善の見込みもないとの評定に達し、同月末をもって雇止めとしたいが、次の勤め先のことも考えて、同年9月30日までの雇用契約を締結するとの結論を出した。そして、同月26日、被告人事課長は原告に対し、学園組織の中で働くことは不適当だが、原告の都合や被告の卒業生であることを考慮して同年9月末までは雇用する旨通告した上、同年4月1日、雇用期間を同年9月30日までとする辞令を交付し、原告はこれを受領した。更に被告は同年9月30日、原告に対し「雇用期間満了により職を解く」との辞令を交付した。
これに対し原告は、無遅刻無欠勤で勤務態度は極めて良好であり、被告による原告の劣悪な勤務態度の主張は、社会通念上看過されるべき行態を針小棒大に強調したものや一部の風評をそのまま取り上げたものであって、根拠のないものであると反論した。その上で原告は、本件雇用契約は期間の定めのないものであり、仮に形式的には期間が1年とされようとも、その実質は定年まで雇用を継続する趣旨の契約であって、原告がそのことを期待するには合理的理由があるから、本件雇止めには解雇の法理が類推適用されるところ、解雇についての正当な理由はないから本件雇用契約は終了していないとして、昭和54年10月から昭和55年4月までの7ヶ月間の賃金の支払いを請求した。 - 主文
- 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 1 本件雇用契約の期間の定め
本件雇用契約は、雇用期間を昭和53年4月1日から1年間とするとの旨の期間の定めが付され、更にその期間満了時頃に、雇用期間を昭和54年4月1日から同年9月30日までとするとの旨の期間の定めを付して更新されたというべきである。
2 解雇の法理の類推適用の可否
被告人事課長が原告の採用前に「早い時期に専任職員にする予定であること、たとえ臨時職員であっても、悪いことをしたり辞職したりしない限り、64歳定年まで毎年更新を続けること」の旨を述べた事実がみられるが、右言辞は、一般論としての本件雇用契約更新の可能性を述べたに過ぎないものというべきであって、右言辞を、原告に対し、臨時職員という雇用形態にかかわらず、毎年契約更新を続ける等により、実質的に期間の定めのないものとして取り扱うことを約束する趣旨とみることはできない。
また、原告が採用された守衛職については、確かに被告は当初期間の定めのない専任職員の採用を予定する等、原告勤務予定の守衛の職務自体の臨時性はみられないし、原告が当時被告人事課長から就職を紹介されたその外の職員はいずれも右専任職員を採用予定のものばかりであったといえるが、そのような事情の下で、被告が、敢えて臨時職員の守衛として原告を採用したということは、期限の定めについて意味を持たせる趣旨であったと考えられ、また被告において、当時臨時職員としての守衛も予定されていなかった訳ではないから、被告が専任職員の採用予定でいた等の事情があったからといって、本件雇用契約における臨時職員としての期間の定めが単に形式だけのものに過ぎないとはいえない。
更に原告の当時の事情からみても、本件雇用契約当時、他でどの程度勤務していたか必ずしも明らかではないが、少なくとも、将来雇用継続されるはっきりした保証がない限り被告には就職しなかったといえる程の安定した勤務先を持っているとは到底みられないから、原告が臨時職員という不安定な形では被告に就職することがあり得ないことを前提にした推論をすることはできない。
以上によれば、本件雇用契約が、当初原告・被告とも毎年の更新を予定したものであったとか、原告が右更新を期待するにつき合理的な理由があったとかいえるだけの事情は見当たらず、この点に関する原告の主張は、いずれの点をとっても、根拠とする事実を欠き、或いは根拠とならない事実を前提とするもので、採用することはできない。従って、本件雇用契約の右雇用期間経過による終了の関係につき、これを雇止めとして解雇の法理を類推適用する余地はないというべきであり、本件雇用契約は、右雇用期間の経過により、昭和54年9月30日限り、当然に終了したということができる。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- 労働判例430号71頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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