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王子労基署長(パートタイマー頸肩腕症候群)事件
- 事件の分類
- 職業性疾病
- 事件名
- 王子労基署長(パートタイマー頸肩腕症候群)事件
- 事件番号
- 東京地裁 − 昭和51年(行ウ)第56号
- 当事者
- 原告個人1名
被告王子労働基準監督署長 - 業種
- 公務
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1978年12月20日
- 判決決定区分
- 棄却(控訴)
- 事件の概要
- 原告(昭和13年生)は、昭和31年に高校を卒業した後、製本工、電気製造組立工、和文タイピスト等幾つかの職業を転々とした後、昭和45年10月頃から生命保険の外務員に、昭和46年10月頃から昭和47年2月頃までチューインガム、本等の箱詰め作業にそれぞれ従事した上、昭和47年4月6日から、台所用洗剤等のプラスチック製容器(ボトル)の製造・販売等を業とするP社に雇用された女性である。原告は、P社において、採用時から4月中旬までの間、ボトルへのフィルム差しという手指作業に、4月中旬から同年8月18日までも間、ボトルの箱詰め作業に従事していた。
原告は、同年9月11日に初めてK接骨院で初めて診察を受けた際、右肩部の負傷の原因として、歩道橋の階段を降りていたとき、誤って足を踏み外して手を強くついて負傷したと述べ、更に同月13日に診察を受けた際には、これとは別個に左右上腕部、背部等を負傷したがその原因として、自宅で段を踏み外し転倒した旨説明したほか、P社における作業により手指、腕、肩等に異常を覚えたなどとして、同年9月以降上記接骨院を始め、幾つかの病院等で診察を受け、それぞれから、右肩部捻挫、肋間神経痛、頸腕症候群、右外傷性関節炎などの診断を受けた。
原告は、P社における一連の作業により頸腕症候群に罹患したとして、被告に対し、労災保険法に基づく休業補償給付を請求したが、被告はこれを不支給とする処分(本件処分)をした。原告は本件処分を不服として、審査請求、更には再審査請求をしたが、いずれも棄却の裁決を受けたため、本件処分の取消しを求めて本訴を提起した。 - 主文
- 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 原告が昭和47年9月8日以降に診察を受けた各病院(接骨院、医院を含む)での診断内容には相互にかなりの差異があるところ、本件訴訟においては、右のいずれの診断が正当であり、また不当であるかを正確に判定するに足りる資料がない。従って、原告が昭和47年9月8日、接骨院で診療を受けた当時同人が頸腕症候群に罹患していたことを全く否定することはできないものの、これを積極的に肯定することもまた困難といわなければならない。
ところで、頸腕症候群の認定基準に関する労働省労働基準局長の通達(昭和44・10・29基発723号、同50・2・5基発59号)によれば、頸腕症候群とは、キーパンチャー、タイピスト、レジスター等上肢に過度の負担のかかる業務に相当期間継続して従事した場合などに罹患することのある傷病であるが、業務外の原因によっても罹患し得るものであることが認められる。しかるに、認定した限りの事実関係のもとにおいては、仮に原告が昭和47年9月8日当時頸腕症候群に罹患していたとしても、原告が同年4月6日以降P社において業務に従事したことが頸腕症候群罹患の原因(但し相当因果関係を認めるに足りる程度の原因)となり得るものであるか、また理論上このことを肯定し得るとしても、実際上も、原告の頸腕症候群の罹患が昭和47年4月6日以降P社の業務に従事したことによるものであるか、それとも、それ以前に原告の関係した業務上又は業務外の原因によるものであるかについて、これを明確に判定することが困難である。そうすると、結局、本件においては原告が昭和47年4月6日以降P社で従事した業務と原告の頸腕症候群罹患との間には相当因果関係を認めることが困難であるといわざるを得ない。 - 適用法規・条文
- 99:その他 労働者災害補償保険法14条
- 収録文献(出典)
- 判例タイムズ381号120頁
- その他特記事項
- 本件は控訴された。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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