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T社女性技術者うつ病解雇控訴事件

事件の分類
解雇
事件名
T社女性技術者うつ病解雇控訴事件
事件番号
東京高裁 - 平成20年(ネ)第2954号
当事者
控訴人兼被控訴人 株式会社
被控訴人兼控訴人 個人1名
業種
製造業
判決・決定
判決
判決決定年月日
2011年02月23日
判決決定区分
原判決変更(一部認容・一部棄却)
事件の概要
 控訴人兼被控訴人(第1審被告。以下「被告」)は、電機機械器具製造等を業とする会社であり、被控訴人兼控訴人(第1審原告。以下「原告」)は、平成2年に被告に雇用された女性である。原告は平成10年1月に深谷工場に転勤となり、プロジェクトリーダーを務めていたところ、平成13年1月頃から多発するトラブルへの対応に追われ、また同年4月に組織変更が行われて3名から2名体制になったほか、未経験の業務を担当させられた。原告は、同年4月に神経科を受診した後、頭痛、不眠、疲労感等から、同年7〜8月に10日間療養し、同年9月4日から30日まで仕事を休み、一旦出勤したものの、同年10月9日から再び欠勤した。

 平成14年5月13日、原告は一旦午前中出勤したが、同月15日より再び長期欠勤に入り、平成15年1月10日、原告の欠勤期間が所定の期間を超えたことから、被告は原告に対し、休職を発令した。平成16年7月13日、原告は、「今後も長期的な療養が必要」という主治医の見解を持参したところ、被告は同月23日に原告と面談し、休職期間満了までに職場復帰は不可能である旨告げ、同年8月6日に解雇予告を行った上、同年9月9日付で原告を解雇した。

 これに対し原告は、業務上過度な精神的苦痛を負い、それにより精神疾患を発症したもので、原告の精神疾患と業務との間には相当因果関係があるから、本件解雇は労基法19条1項に違反し無効であるとして、被告に対し、労働契約上の地位の確認と賃金の支払を求めた外、精神的苦痛に対する慰謝料として1500万円を請求した。

 第1審では、原告の雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と賃金の支払い及び安全配慮義務違反による慰謝料20万円の支払を被告に命じたことから、被告はこれを不服として控訴に及んだ。一方原告は慰謝料の額の引上げを求めて控訴した。
主文
1(1)第1審被告の控訴に基づき、原判決主文第2項中、第1審被告に対し、平成16年10月から本判決確定の日まで、毎月25日限り月額26万9683円の割合による金員を超えて金員の支払を命じた部分を取り消す。

(2)上記の取消に係る第1審原告の請求を棄却する。

2(1)第原告の控訴に基づき、第1審原告敗訴の部分のうち、次の(2)の請求に係る部分を取り消す。

(2)第1審被告は、第1審原告に対し、原判決主文及び第3項の金員のほか、161万3200円及びこれに対する平成16年12月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

3 第1審原告及び第1審被告のその余の控訴をいずれも棄却する。

4 第1審原告が当審で追加した請求中、本判決確定の日の翌日から、毎月25日限り月額47万3831円の割合による金員及びこれに対する各月26日から完済に至るまで年6分の割合による金員の支払を求める部分を却下する。

5 第1審被告は、第1審原告に対し、平成16年10月から本判決確定の日までの毎月25日限り支払うべき月額26万9683円の割合による金員に対する各月26日から完済に至るまで年6分の割合による金員を支払え。

6 第1審被告は、第1審原告に対し、699万1218円及びこれに対する平成16年12月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

7 第1審原告が当審において追加したその余の請求をいずれも棄却する。

8 訴訟費用は、第1、2審を通じ、これを10分し、その6を第1審原告の負担とし、その余を第1審被告の負担とする。

9 この判決の第2項(2)、第5項及び第6項は、仮に執行することができる。
判決要旨
 当裁判所は、第1審原告の請求は、雇用上の地位の確認、平成13年9月分から平成16年10月(同年9月分)から本判決確定の日まで毎月25日限り月額26万9683円の賃金並びにこれらに対する当該月の26日から完済に至るまでの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金、治療医13万8800円、診断書作成料4万4960円、交通費16万3440円、慰謝料320万円、弁護士費用130万円及び見舞金240万円並びにこれらに対する民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がないと判断する。

1 原告の鬱病は「業務上の疾病」か

 労働者災害補償制度における「業務上」の疾病とは、業務と相当因果関係のある疾病とされているところ、同制度が使用者の危険責任に基づくものであると理解されていることから、当該疾病の発症が当該業務に内在する危険が現実化したと認められる場合に相当因果関係があるとするのが相当である。そうすると、発症と業務との間に相当因果関係が存在するというためには、当該労働者の担当業務に関連して精神障害を発症させるに足りる十分な強度の精神的負担ないしストレスが存在することが客観的に認められる必要があるのであり、当該労働者と同種の職種において通常業務を支障なく遂行することが許容できる程度の心身の健康状態を有する平均的労働者を基準として、労働時間、仕事の質及び責任の程度等が過重であるために当該精神障害が発病させられ得る程度に強度の心理的負荷となっている場合に、そのような十分な強度を有する精神的負担ないしストレスがあると判断すべきものであり、ここでいう平均的労働者とは、環境由来のストレスと個体側の反応性、脆弱性との間で精神的破綻が決まり、ストレスが強ければ個体側の反応性、脆弱性は小さくても精神障害を発症し、逆に脆弱性が大きければストレスが小さくても発症するとし、現在の医学的知見により広く支持されているストレス−脆弱性理論を踏まえると、ある程度幅のあるものとならざるを得ないのであって、平均的労働者として通常想定される範囲内にある同種の労働者集団の中の最も脆弱である者を基準とすべきものと考える。したがって、労働基準法19条1項にいう「業務上」の疾病とは、上記の見地から見たときに、その疾病の発症が当該業務に内在する危険が現実化したと認められ、もって当該業務と相当因果関係にあるものというと解する。

 被告は、原告のパソコンを他人が操作した可能性がある等主張するが、原告が深夜まで業務をしていたことが認められ、かえって被告は従業員に多大なサービス残業をさせており、時間外労働をした原告ら従業員は、あらかじめ申請していた時間外労働時間を超えて就労した場合でも、勤務表に実際に従事した時間外労働時間数をありのままに記載することはなかったことが認められる。少なくとも原告は、午後9時頃までに帰宅することができる日には午後6時台の休憩時間は取っていなかったし、午後10時台の休憩時間も取っていなかったのである。

 原告は、入社後、慢性的にひどい生理痛を抱えていたことが窺われ、平成12年6月には慢性頭痛との診断名で薬の処方を受けていること、同年12月には原告の頭痛、不眠、仕事の途中で車酔いしたような感じが出たりするとの主訴に基づき神経症と診断され薬の処方を受けているが、それを除いて精神疾患の既往歴はなく、家族にも精神疾患を発症した者はいない。また、原告については、入社以来の経歴、被告から平成12年度の賞与について良好の評価を受け、プロジェクトリーダーに任命される処遇を受けたことから窺われる勤務内容、上司及び同僚の評価に鑑みると、原告が本件鬱病の発病時に就いていた職種において、通常業務を支障なく遂行することが許容できる程度の心身の健康状態を有する平均的労働者の範囲内から逸脱するような脆弱性があったと認めることはできない。

 一方、原告は平成12年6月に慢性頭痛の診断名により抑鬱に適応のある薬の処方を受け、同年12月には神経症と診断されるなどしていることに鑑みると、原告にある程度の脆弱性が存在したと認めざるを得ず、原告の神経症が本件鬱病の発症に何らかの影響を与えた可能性は否定できないが、それを除いて精神疾患の既往歴はなく、家族にも精神疾患を発症した者はいないことや、上記業務内容とを総合考慮したとき、原告の個体側の脆弱性が発病の原因として業務よりも重い意味を持ったとまで認めることはできない。

 しかし、個別の労働者が与えられた業務により鬱病を発病した場合において業務起因性が認められるためには、その与えられた業務が当該労働者に鬱病を発病させる程度に過重な業務であるとともに、当該労働者と同様の職種において通常業務を支障なく遂行することが許容できる程度の心身の健康状態を有する平均的労働者の範囲内にある労働者のうち、最も脆弱な性格傾向にある者についても発病させる程度に過重な業務であると認められれば足りるのであって、一般の平均的な労働者ないし上記平均的労働者の範囲内にある者の多くについて、鬱病を発症させる程度にまで過重な業務であることが認められる必要はないし、被告が主張するような「特に過重な業務」である必要は必ずしもない。また、プロジェクトに関与した関係者に精神障害を発症した者がいないことも、なお業務起因性を認めることを妨げるものではない。

2 被告の債務不履行責任又は不法行為責任の有無

一般に使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う。本件において、被告は短期間の余裕のないスケジュールを組み、原告に長時間労働をさせているところ、その時間は特別延長規定の定める時間をも超えている。また被告において、平成12年4月、従業員のメンタルヘルス対策に着手していたのであるし、平成13年3、4月の「時間外超過者健康診断」の問診結果から、原告が頭痛、不眠等の自覚症状を訴え始めていることを認識していたものと認められる。この点被告は、原告が医療機関で診察を受けていることを産業医等に告げていなかったために、本件鬱病の発病についての予見可能性がなかった旨主張するが、むしろ被告の産業医としては、上記問診結果を受けて、原告に対するより詳細な診察を実施するなどして、原告の健康状態に問題がないことを確認すべき責務があったというべきである。このような状況の下では、被告は遅くとも同年4月には、原告についてその業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負っていたものと解するのが相当である。

原告の上記長期の休暇は、原告が体調不良を理由に長期間の休暇を取り、重要な承認会議を欠席したことのような事態はそれまでの原告のありようとしては考えられない出来事であった。しかも原告は、同年6月上旬に職場復帰した後、反射製品開発業務の担当ができないとしたり、その業務内容の限定を求めたりする申出をし、更に同僚から見ても原告が疲れ気味であったことが窺われた。このような状況の下では、課長においては、原告の申出に対し、その理由の詳細を適切に聴取するなどしながら、原告の業務の軽減を図るべきであった。しかるに課長は、原告の申出について、その詳細を適切に聴取することもなく、漫然と原告の業務軽減をしない状態を継続した。

このような状況の下では、被告の産業医は、課長に対し、原告の就労状況を問い合わせるなどした上、原告の業務負担を軽減するなどの措置を講ずるべきであった。しかるに、被告は、かえって同年7月に原告を会議の責任者として、短期間のうちに会議出席、資料・データ作成に当たらせ、その後原告は体調を崩し、放心状態でいることも見られるようになった。そうすると、原告が平成13年4月に本件鬱病を発病し、同年8月頃までにその症状が増悪していったのは、被告が、原告において、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等を過度に蓄積して心身の健康を更に悪化させるおそれがあることを具体的客観的に予見可能であったにもかかわらず、原告の業務量を適切に調整して心身の健康を損なうことや更なる悪化を辿ることがないよう配慮しなかったという不法行為によるものであるとともに、雇用契約上の安全配慮義務に違反する債務不履行であったということができる。

3 被告が原告に支払うべき賃金及び損害賠償金の額

 本件解雇は無効であるし、原告は業務上の疾病である鬱病により労務の提供が社会通念上不能になっているといえるから、原告は民法536条2項本文により、原告は被告に対し本件解雇後の賃金請求権を失わない。そして、賃金額は、原告が精神障害を発症する以前の平成12年の年収額が568万5983円であることが認められるから、月額47万3831円と認めるのが相当である。この点被告は、原告のように労務提供の能力及び意思を有していない場合には、民法536条2項の適用により賃金を請求できない旨主張するが、債権者である使用者の責めに帰すべき事由により債務者である労働者が労務の提供をすることができなくなる場合には、同条項の適用があるものと解すべきである。そして、労務を提供できなくなる事態には、労働者の労務提供の意思を形成し得なくする場合も、労務提供の能力を奪う場合もあり得るのであるから、労働者において労務提供の意思を有していなくても、それが使用者の責めに帰すべき事由により労務提供の意思を形成し得なくなった場合には、当然に同条項の適用があるものと解すべきであって、業務上の疾病として本件鬱病を罹患した原告の状況は、使用者の責めに帰すべき事由により労働者が労務提供の意思を形成し得なくなった場合に当たる。

 また被告は、使用者は労災保険料を負担していたにもかかわらず、本来民事賠償額から控除できる労災保険給付が支給されずに損害額の減額が認められないという不合理に陥る旨主張する。しかし、労基法及び労災保険法上の「休業補償」の趣旨は、労働者が業務上の疾病等による労務提供不能の状態に陥った場合について、それは企業活動によって利益を得ている使用者に損害の填補を行わせ労働者を保護することが相当であるとの見地から、労働者の最低生活を保障するため、使用者に帰責事由がない場合であっても、平均賃金の6割に当たる部分の支払を、罰則により担保しながら使用者に義務付けるとともに、労働者の保護を十全なものとするために労災保険制度による補償も併せて定めたものと解される。このような制度目的に照らすと、使用者に帰責事由がある業務上の疾病等による労務提供不能の場合に、労基法ないし労災保険法によって、民法536条2項の適用を排除し、雇用契約の継続を否定しなければならないと解すべき合理牲はなく、被告の指摘する使用者の不利益があるとしても、雇用契約の継続を否定し、同条項の適用が排除されるとの解釈をすべき理由とはならない。そして、労働者につき同条項の適用により賃金請求権が認められる場合には、労災保険法14条1項は、休業補償給付の要件として、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けないことを規定していることから、使用者において未払賃金を受領したときに、労働者が受領済みの休業補償給付金は、法律上の原因を欠く不当利得であったことが確定するにすぎない。

ところで、原告の本件賃金請求は、本件判決確定後における将来の給付請求を含んでいるところ、本件判決確定後になお賃金に係る紛争が収束することなく続くものとは認められないのであり、あらかじめ将来請求しておく必要性を肯定することはできない。したがって、本判決確定後における将来の給付請求については、訴えの利益を欠く不適法なものである。

 原告は、被告に対し、以下のとおり、平成13年9月分から平成16年8月分まで、平成12年の年収額568万5983円から時間外労働賃金90万9783円及び賞与154万円を控除した323万6200円を基礎として算出した3年分合計970万8600円の未払賃金請求権、平成16年10月から本判決確定の日までの月額26万9683円の賃金請求権を有することになる。

賞与相当額についてみるに、平成12年当時の賞与は、原告の有する資格を前提とすると、抜群、優秀、良好、要努力の4つの考課区分からなり、各区分の分布率は、抜群5%、優秀20%、良好65%、要努力10%で、原告は平成12年上期及び下期がいずれも「良好」であったこと、リーダーの地位を与えられたことを考慮すると、本件鬱病に罹患しなければ、従前どおり、良好の考課を受ける程度には稼働することができたものと推認するのが相当である。次に時間外労働賃金相当額について見るに、被告は原告が時間外労働をすることはなく、時間外労働賃金を請求することはできない旨主張するが、原告の平成12年12月から平成13年4月までの稼働時間数等に照らして、原告が1ヶ月45時間の法定時間外労働をするとしても、鬱病発病の危険はないと考えられる。そして、原告の時間外労働賃金は1時間当たり2288円であるところ、45時間の法定時間外労働に係る賃金は、1ヶ月当たり10万2960円、年間123万5520円となり、平成12年の年収に占める時間外労働賃金額を上回ることになる。そうすると、原告は平成13年9月以降も、平成12年の年収額568万5983円と同程度の収入を上げることができたものと認めるのが相当である。したがって、原告は、被告に対し、平成13年9月分から平成16年8月分までの3年分合計1705万7949円の未払休業損害金、平成16年9月から本判決確定の日まで月額47万3831円の休業損害金の支払いを請求することができる。

 原告が体調不良を申告しなかったことは、診断に係る病名、処方薬、症状等からみて、被告が申告を受ければ原告の業務量を軽減したと考えられる。そうすると、原告の対応は、被告において本件鬱病の発病を回避したり、発病後の増悪を防止する措置をとる機会を失わせる一因となったといわざるを得ない。この点、損害の公平な分担という見地から見れば、過失相殺をすべき事情といわざるを得ない。また原告は、入社後、慢性的に生理痛を抱えていたことが窺われ、平成12年6月ないし7月には、慢性頭痛との診断名で、抑鬱、神経症に適応のある薬の処方を受けていること、同年12月には神経症と診断され、薬の処方を受けていたことに加え、業務が精神疾患の原因であり、その業務を離れて治療を続けながら9年を超えて、なお寛解に至らない状態については、本件鬱病の発病につき業務起因性の認定を妨げるほどに重いものではないが、業務外にも発病を促進した因子又は寛解を妨げる因子が存在するという個体側の脆弱性が存在したものと推認せざるを得ない。

 本件鬱病の発病及びその増悪に寄与した諸事情は、過失相殺に当たり斟酌すべき事情又は斟酌すべき心因的な事情であり、これらの諸事情を斟酌し、被告において賠償すべき損害の額を全損害の8割と認めるのが相当である。そうすると、原告は被告に対し、過失相殺及び素因減額をした後の1364万6359円及び月額37万9064円を請求することができることになる。

 原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料としては、平成13年9月以降既に9年6ヶ月の療養を続けていること、本件鬱病を発病するまでの平成12年12月から平成13年4月までの間に、被告が原告に従事させた業務内容や、本件鬱病の発病から同年8月までの被告による対応内容は、前記の脆弱性を有する原告に対して要求する安全配慮を欠く過重な業務、不当な対応であったこと、他方、本件解雇が無効であることにより賃金ないし賃金相当の損害金が支払われること、被告の平成13年8月以降の対応については安全配慮義務違反があるとはいえず、むしろ被告は、打切補償を支払うことによる解決をすることもなく、復職後の職場に考慮を払うなど相応の努力をしながら、原告の復職を待つ対応を取り続けるなどしていたこと等の事情を総合考慮し、400万円と認めるのが相当である。

 原告は、労災保険法に基づき、平成14年9月8日以降、1日当たり休業補償給付金9711円及び特別支給金3237円を受領している。また健康保険組合から、医療費44万5578円、現金給付1030万8798円を受領し、その後医療費の全額と現金給付の一部662万9950円を健康保険組合に返戻し、残額367万8848円を保持している。労災保険法の休業補償給付については、逸失利益である休業損害金と相互補完牲を有する関係にあるといえるから、その受領額を損害額から控除することになる。そうすると、控除後の被告が支払うべき休業損害金は、100万4271円が被告において負担すべき年間の休業損害金となる。

(見舞金) 略
適用法規・条文
民法415条、418条、709条、722条2項
収録文献(出典)
労働経済判例速報2101号3頁、労働判例1022号5頁
その他特記事項