判例データベース
ゲーム開発・販売会社準強制わいせつ等事件
- 事件の分類
- セクシュアル・ハラスメント
- 事件名
- ゲーム開発・販売会社準強制わいせつ等事件
- 事件番号
- 大阪地裁 − 平成21年(ワ)第19692号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 個人1名 A
ゲーム開発・販売会社 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2011年02月25日
- 判決決定区分
- 一部認容・一部棄却
- 事件の概要
- 平成18年7月8日、ゲーム開発・販売を業とする被告会社に勤務する女性社員(原告)が職場旅行に参加したところ、男性同僚(被告A)から、拒絶不能の状態に乗じた準強制わいせつの被害を受けた(本件事件)。原告は、本件事件について、被告会社に対し被害の申し出をしたにもかかわらず、適切な対応をされないまま放置された。被告会社は同年9月、被告Aに在宅勤務を命じ、同年12月には他地域の事務所への転勤を命じたにもかかわらず、原告に対しその旨説明をしなかった。また、同年10月頃、総務部次長Hは原告に対し、太ってきたなど原告の容姿を評する発言(本件発言)をしたところ、被告会社は、本件発言はセクハラには当たらないとの判断の下、Hに謝罪の形を取らせたのみであった。
原告は、被告Aのわいせつ行為により著しく精神的障害を受け、本件事件直後から、過呼吸、フラッシュバック、睡眠障害等の症状に悩まされていることを主張するとともに、Hの発言により精神的苦痛を被ったとして、被告A及び被告会社に対し、慰謝料等を請求した。なお、被告Aによるわいせつ行為については、原告からの告訴により、懲役1年6ヶ月、執行猶予4年の有罪判決が下された。 - 主文
- 判決要旨
- 使用者は、被用者に対し、信義則上その人格的利益に配慮すべき義務を負っており、セクハラに関する問題が生じ、これによって被用者の人格的利益を侵害される蓋然性がある場合又は侵害された場合には、その侵害の発生又は拡大を防止するために必要な措置を迅速に講ずべき義務(職場環境調整義務)を負っていると解される。本件わいせつ行為は平成18年7月8日にされ、被告会社は同年9月頃にはその事実を把握していたが、被告会社が同月頃、被告Aに在宅勤務を命じ、同年12月には他地域の事務所への転勤を命じたにもかかわらず、原告に対して速やかにこれらの事実を説明していなかったのであるから、原告に対し職場環境調整義務の履行を怠ったと認められる。また、同年10月頃、被告会社の総務部次長Hが原告の容姿を評する発言をしたが、被告会社は、本件発言がセクハラには当たらないとの判断の下、Hに謝罪の形を取らせたのみであり、本件発言はセクハラに当たるというべきであるから、被告会社には、本件発言について適切な対応をしなかった点において、同義務違反があったといえる。
被告Aのわいせつ行為については、原告の精神的障害は大きく、本件事件直後から過呼吸、フラッシュバック、睡眠障害等の症状に悩まされていることなどを考慮すると、被告Aは原告に対し、治療費15万円余のほか、慰謝料50万円、弁護士費用7万円を支払わなければならない。また、Hの本件発言は、職場で行われたものであり、これによって原告が被った損害は、Hが会社の事業の執行について加えた損害に当たるというべきであるので、被告会社は民法715条1項に基づき、その損害を賠償する責任がある。その損害額は、Hが総務部次長として従業員の健康管理を預かる立場にあり、かつ、原告が本件事件により心身を損ねていたことを認識しながら本件発言を行ったものであり、その態様は悪質であることなどを考慮すると、10万円とするのが相当である。また、原告は、被告会社から被告Aに対する在宅勤務や転勤の措置について正確な説明を受けられなかった上、Hの本件発言についても適切な対応を受けられなかったことにより、相当期間、職場で安心して就業することができなかったのであるから、原告がこれらによって被った精神的苦痛を慰謝するためには10万円をもってするのが相当であり、弁護士費用は2万円が相当である。 - 適用法規・条文
- 民法709条、715条1項
- 収録文献(出典)
- 平成24年度年間労働判例命令要旨集400頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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