判例データベース
N社配転拒否事件
- 事件の分類
- 妊娠・出産・育児休業・介護休業等職場でのいじめ・嫌がらせ
- 事件名
- N社配転拒否事件
- 事件番号
- 最高裁-平成18年(受)第1263号、平成18年(オ)第161号
- 当事者
- 原告…個人2名、被告…株式会社
- 業種
- 食料品製造業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2008年04月18日
- 判決決定区分
- 上告不受理
- 事件の概要
- X1、X2(一審原告、二審被控訴人)はスイスに本拠を置く食品メーカー日本法人の株式会社N(一審被告、二審控訴人)の姫路工場に現地採用された男性従業員である。2003(平成15)年5月9日、同工場のギフトボックス係廃止による人員余剰に伴い、X1、X2はYに霞ヶ浦工場への転勤を命じられ(以下「本件配転命令」という。)、やむを得ない事情で応じられない場合には退職してもらうとされた。これに対し、X1については非定型精神病である妻の自身による介護が、X2については要介護度2の実母の妻による介護を助けることができなくなること等を理由として、Nによる本件配置命令の無効確認(①)、および、各人について2003年8月から本件確定まで霞ヶ浦工場を欠勤したものとして支払われなかった給与につき、当該期間の賃金相当額を求め(②)、訴訟が提起された。
第一審(神戸地裁姫路支部 2005 年5月9日判決)は、①につきNはX1らの個別の同意なしに転勤を命ずる権限を有するものの、本件配転命令は、業務上の必要性に基づいてなされたにせよ、たまたま廃止時にその係に所属した者だけが不利益を被らなければならないのは疑問であり、X1らに対して通常甘受すべき程度を超える不利益を負わせるものであることを認めた。更に、X1らが本件配転命令によって被る不利益は肉体的精神的不利益が大きく、それはNが経済的な面で相当程度の援助を尽くしたと認められたとしても、金銭的な援助では補填できる性質のものではなく、先例として本件配転命令に従って転勤した家庭的事情を抱えたものの擁する不利益の程度を上回っているとし、NのX1らに対する配転命令権の濫用に当たるとしてX1らの主張を容認した。②につき、Xらは転勤期限以降も姫路工場へ赴いており、2005年9月以降の給与支払いについて認めるのが相当であるとした。
第二審(大阪高裁 2006年4月14日判決)は、X1らが配転による不利益に関する書面を個別面談(X1につき2003年5月20日、X2につき同年同月13日及び同月21日実施)の後に明らかにしたことにつき、NはX1らの個別事情について事前に確認調査をせず、一律に配転を命令した後に事情聴取をするという方法をとり、また配転困難事情の申告についても期限を決めて通知したわけでもないことから、Nが定めた異動期限及び異動できない場合の申出期限内になされたXらの申出・主張は信義則に反するものではないとし、そのうえで、信義則が問題となるのは、使用者側が裏付け資料の提出を求めたのにもかかわらず労働者が相当期間内に提出しないような場合であると判示し、控訴を棄却した。これを受けてNが上告した。 - 主文
- 1 本件を上告審として受理しない。
2 申立費用は申立人の負担とする。 - 判決要旨
- 上告不受理。育児・介護休業法26条と配転との関係では、本件配転命令によるX1らの不利益を軽減するために採り得る代替策の検討として、工場内配転の可能性を探るのは当然のことであり、本件配転命令は、X1らに通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるもので、配転命令権の濫用に当たり無効であって、X1らは霞ヶ浦工場に勤務する雇用契約上の義務はないとした高裁判決を確定。
- 適用法規・条文
- 育児・介護休業法26条
- 収録文献(出典)
- 労働判例925号11頁
- その他特記事項
- 上告不受理、確定
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
神戸地裁姫路支部 - 平成15年(ヨ)第92号 | 一部認容・一部棄却 | 2003年11月14日 |
神戸地裁姫路支部 − 平成15年(ワ)第918号 | 一部認容・一部棄却(控訴) | 2005年05月09日 |
大阪高裁 − 平成17年(ネ)第1771号 | 棄却 | 2006年04月14日 |
最高裁-平成18年(受)第1263号、平成18年(オ)第161号 | 上告不受理 | 2008年04月18日 |