判例データベース
K社事件(地裁)
- 事件の分類
- セクシュアル・ハラスメント
- 事件名
- K社事件(地裁)
- 事件番号
- 大阪地裁 平成24年(ワ)第5163号
- 当事者
- 原告…個人2名、被告…株式会社
- 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2013年09月06日
- 判決決定区分
- 棄却
- 事件の概要
- 水族館の経営等を目的とする株式会社であるY社(被告)の男性従業員であるX1とX2(原告)(以下、X1、X2と合わせて「Xら」と略記する。)は、当社女性従員Aに対して度を越えた自身の下ネタ、女性遍歴、性行為等の発言をするなどセクシュアルハラスメント(以下、「セクハラ」と略記する。)行為等を行ったとして、Xらに対し、就業規則に基づく懲戒処分としての各出勤停止処分を行うとともに、懲戒処分を受けたことを理由に、資格等級制度規程に基づき、Xらの等級をいずれもM0課長代理からS2係長に降格した。
これを受けてXらはY社に対し、Xらはセクハラ行為等を行っていないため懲戒事由とされる事実がなく、また、Xらに対する各処分は手続きの適正も欠き、懲戒事由との均衡を欠く不相当に重い処分であるため、懲戒権を濫用したものとして無効であり、したがって各処分を理由とする各降格は違法であるとして、各処分の無効確認、及びXらがM0の等級を有する地位にあることの確認を求め、不法行為に基づき慰謝料等を請求した。 - 主文
- 1 Xらの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用はXらの負担とする。 - 判決要旨
- 懲戒事由の有無につき、セクハラ行為等を受けたAがセクハラ相談の窓口担当であったB係長(以下、B係長と略記する。)とのXらの言動等に関する面談の後に作成した、具体的な被害の内容等を記したメモや証言、陳述書につき、いずれも信用することができ、Y社が本件各懲戒事由として主張するXらのセクハラ行為等の存在をいずれも認めることができる。
懲戒処分につき、Xらの行為が就業規則4条(5)に規定される「会社の秩序又は職場規律を乱すこと」、及びこれに該当する禁止行為を具体化する目的で作成し従業員に配布された「セクシャルハラスメントは許しません!!」と題する文書に列記されている各事項(「性的な冗談、からかい、質問」、「その他、他人に不快感を与える性的な言動」等)に該当し、実質的に懲戒処分に相当するか否かを検討したところ、Xらの言動は、一般の女性労働者の感じ方に照らし、発言を聞いた女性労働者に対して強い不快感を与え、職場の環境を悪化させる行為ということができ、Xらは自らの発言がAを含む女性労働者に対してそのような影響を与え得ることを認識していたか、少なくとも容易に認識し得たものということができるため、Xらの行為は実質的に懲戒処分に相当するものといえる。
本件各処分の手続きの相当性につき、Y社は複数回にわたりAらに対する事情聴取を行うなどし、Xらにも弁明の機会を与えた上で本件懲戒事由を認定したものであり、Xらも事実関係について基本的に認めていたこと等から、本件各処分の手続きに不相当な点は認められない。
本件処分の相当性につき、Xらのセクハラ行為等の悪質性及びこれらによる被害の程度、Xらの役職、Y社におけるセクハラ行為防止の取組み等に照らせば、本件処分があまりにも重すぎるものとして、社会通念上相当性を欠くとまでいうことができず、したがって、本件各処分は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められるから有効である。
本件降格の有効性につき、本件各処分は有効であるから、本件各降格については、客観的に合理的な理由があり、XらがY社の管理職という立場にありながら、職場において悪質なセクハラ行為等を繰り返し行ったことに照らせば、XらについてM0の等級から一段降格してS2の等級に格付けしたことが、社会通念上相当性を欠くとはいえず、本件各降格は、人事権の行使として有効なものというべきである。
以上より、本件各処分及び本件各降格はいずれも有効なものであるから、不法行為を構成するものでないことは明らかであり、不法行為に基づく損害賠償請求はいずれも理由がない。 - 適用法規・条文
- 民法709条
- 収録文献(出典)
- 労働判例1099号53頁
- その他特記事項
- 本件は控訴された。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
大阪地裁 平成24年(ワ)第5163号 | 棄却 | 2013年09月06日 |
大阪高裁 平成25年(ネ)第2860号 | 一部容認(原判決一部変更)、一部棄却(上告受理申立) | 2014年03月28日 |
最高裁 − 平成26年(受)第1310号 | 原判決中上告敗訴部分を棄却 | 2015年02月26日 |