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I銀行賃金請求事件
- 事件の分類
- 賃金・昇格
- 事件名
- I銀行賃金請求事件
- 事件番号
- 盛岡地裁 − 昭和57年(ワ)第103号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 株式会社I銀行 - 業種
- 金融・保険業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1985年03月28日
- 判決決定区分
- 認容(原告勝訴)
- 事件の概要
- 被告I銀行は「世帯主たる行員に対しては、家族手当を支給する」としつつ、「世帯主たる行員」について「その配偶者が所得税法に規定されている扶養親族対象限度額を超える所得を有する場合は、夫たる行員とする」と規定した給与規程に基づき、夫が市会議員となって扶養控除対象限度額以上の所得を得るようになった原告女子行員に対し、家族手当及び上記支給基準が準用されて支給されていた世帯手当の支給を打ち切った。そこで、当該女子行員が、同給与規程部分は女子であることを理由として賃金について男子と差別的取扱いをするものであるから無効であるとして、上記手当の受給請求権を主張しその未支給分の支払を請求したものである。
- 主文
- 一被告は原告に対し、金102万4,500円及びうち金37万9,800円については昭和57年3月1日から、うち金64万4,700円については昭和59年4月1日からそれぞれ完済に至るまで年6分の割合による金員を支払え。
二訴訟費用は被告の負担とする。 - 判決要旨
- 上記給与規程部分について、みなし規定(家族手当を支給する対象者とされている世帯主は、配偶者が所得税法に規定されている扶養控除対象限度額を超える所得を有する場合は、夫たる行員とみなすという趣旨の規定)と解しても、また、推定規定(夫たる行員と推定する趣旨の規定)と解しても、いずれも女子であることのみを理由として妻たる行員を著しく不利に取り扱う規定である。被告における家族手当の支給は、扶養家族を有する行員に対してその家計を補助することを目的としたものであり、その目的に徴するとそれ自体の性格が男女という性別とは無関係な手当と解するのが相当である。仮に、支給基準を強いること自体には合理性が認められるとしても、支給基準の内容として夫婦のいずれか一方にあらかじめ特定するという男女の性別に着目した基準を設けることの合理性を根拠づけるものにはなりえない。家族手当も労基法4条の「賃金」に該当することは明らかであることから、本件給与規程部分は、労働基準法第4条、第92条により無効であり、また、世帯手当の受給資格についても家族手当と同様に解すべきである。
- 適用法規・条文
- 07:労働基準法4条,07:労働基準法92条
- 収録文献(出典)
- 労働関係民事裁判例集36巻2号173頁、労働判例450号62頁、判例時報1149号79頁、判例タイムズ550号127頁、労働経済判例速報1215号3頁、労働法律旬報1120号76頁
- その他特記事項
- 被告側控訴(No.6参照)。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
盛岡地裁 − 昭和57年(ワ)第103号 | 認容(原告勝訴) | 1985年03月28日 |
仙台高裁 − 昭和60年(ネ)第248号、仙台高裁 − 昭和61年(ネ)第119号 | 控訴棄却、被控訴人の附帯控訴認容(その限度で原判決変更)(被控訴人勝訴) | 1992年01月10日 |