判例データベース
T社従業員地位確認等請求事件
- 事件の分類
- 退職・定年制(男女間格差)
- 事件名
- T社従業員地位確認等請求事件
- 事件番号
- 神戸地裁 − 昭和39年(ワ)第593号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 個人1名 - 業種
- 製造業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1967年09月26日
- 判決決定区分
- 認容(原告勝訴)
- 事件の概要
- 被告会社は、従業員約40名、全国に12ヶ所の営業所を有し、蒿工品等の製造販売を営む株式会社である。原告は、昭和36年3月1日付けで被告会社の従業員として採用された。被告会社は、昭和39年4月14日原告に対し、社務の都合により解雇する旨を文書で予告し、同年5月15日以降賃金の支払をしない。
これに対し、原告は、本件解雇予告の意思表示は解雇権の濫用であって無効であり、原告の被告会社での従業員の地位及び未払賃金(昭和39年5月15日以降)の支払を求め、提訴した。
原告は、原告が結婚する前々日である3月25日「被告会社では結婚すれば退職する慣例になっているから退職願いを提出しなさい」と総務課長に申向けられ、なお、連日の間退職願いの提出を強要し、原告はこれをあくまで拒んだため、解雇予告の意思表示をなした、と主張した。
これに対し、被告は、被告会社存立のための人員整理であり、原告の勤務成績等が理由であり、結婚祝いを手渡した際、在職5年未満でも結婚退職なら退職金は全額支給されるので、原告に結婚したら退職するのか聞いただけで、退職願いを出すことを強要した事実はなく、結婚を理由とした解雇でない、と主張した。 - 主文
- 原告Aが被告T社従業員であることを確認する。
被告は原告に対し昭和39年5月15日から毎月20日に1ヶ月金1万5,100円の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。
この判決は第2項に限り仮に執行することができる。 - 判決要旨
- 被告会社は、人員整理も止むを得ないと認めるに足る事態に陥っているということはできず、解雇の予告をするまでの間、結婚したら退職してもらうことになっているのでやめてほしいと執拗に退職を要求したこと等を考察すると、被告会社は女子の労働者である原告の結婚のみを理由にこれを企業から排除する意図を以って社則第14条第4号を適用して原告に対し本件解雇予告をなしたものと認めるのが相当である。企業が何ら特段の合理的理由なしに女子の従業員だけを結婚を理由に一方的に解雇することは性別を理由に男女を差別的に取り扱うものであって、公序に反し且つ権利の正当な行使の範囲を逸脱したものとしてその効力を否定さるべきであることにかんがみるときは、女性従業員の結婚は解雇の事由としての社則にいう「会社の都合上やむを得ないとき」に該当しないものと解するのが相当である。そうすると、被告会社は原告に対し社則第14条第4号にいう、「会社の都合上やむを得ないとき」に該当する事実がないのに、その解釈を誤り女子従業員である原告の結婚の事実をとらえ、第14条第4号に則り解雇予告をなしたものであるから、その効力を否定すべきものである。
- 適用法規・条文
- 99:なし
- 収録文献(出典)
- 労働関係民事裁判例集18巻5号915頁
- その他特記事項
- なし。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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