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N自動車雇用関係存続確認等請求上告事件

事件の分類
退職・定年制(男女間格差)
事件名
N自動車雇用関係存続確認等請求上告事件
事件番号
最高裁 − 昭和54年(オ)第750号
当事者
上告人 N自動車株式会社
被上告人 個人1名
業種
製造業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1981年03月24日
判決決定区分
棄却(上告人敗訴)
事件の概要
本事件は定年を男子満55歳、女子満50歳(昭和48年4月1日以降は男子60歳、女子55歳)と定めた就業規則の適用をうけ退職を命ぜられた女子労働者が、5歳差の男女別定年制は民法90条により無効であると主張したものである。
女子労働者からの地位保全を求める仮処分申請では、第1審、第2審とも労働者側が敗訴(5歳の定年の差は女子従業員を著しく不当に差別するものではない)したが、雇用存続等確認をもとめる本訴では第1審、第2審ともに労働者側が勝訴(本件男女別定年制は女子労働者を理由もなく差別するもので、企業経営上の合理性は認められず社会的な妥当性を著しく欠くものであるから公序良俗に反し無効)し、これを受け会社側が上告していたものである。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
判決要旨
上告会社の男女別定年制に合理性があるか否かにつき上告会社における女子従業員の担当職種、男女従業員の勤続年数、高齢女子労働者の労働能力、定年制の一般的現状等諸般の事情を検討した結果、上告会社においては、女子従業員の担当職務は相当広範囲にわたっていて、従業員の努力と会社の活用策いかんによっては貢献度を上げうる職種が数多く含まれており、女子従業員各個人の能力等の評価を離れて、その全体を上告会社に対する貢献度が上がらない従業員と断定する根拠はないこと、また、女子従業員について労働の質量が向上しないのに、実質賃金が上昇する不均衡が生じていると認めるべき根拠はなく、少なくとも、60歳前後までは男女とも通常の職務であれば、企業経営上要求される職務遂行能力に欠けるとして、一律に不適格とみて企業外へ排除するまでの理由はないなど上告会社の企業経営上、定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由は認められないとした原審の認定判断は正当として是認できる。原審の確認した事実関係のもとにおいて、上告会社の就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効であると解するのが相当である。
適用法規・条文
02:民法90条,01:憲法14条,02:民法1条の2
収録文献(出典)
最高裁判所民事判例集35巻2号300頁、
判例時報998号3頁、
判例タイムズ440号53頁、
労働経済判例速報1078号6頁、
労働判例360号23頁、
山川隆一ジュリスト77号113号
その他特記事項
本件の地裁判決(No.31)、高裁判決(No.32)参照。