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F社雇用関係存続確認等請求事件
- 事件の分類
- 解雇
- 事件名
- F社雇用関係存続確認等請求事件
- 事件番号
- 前橋地裁 − 昭和41年(ワ)第332号
- 当事者
- 原告 個人一名
被告 F株式会社 - 業種
- 鉱業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1970年11月05日
- 判決決定区分
- 請求棄却(原告敗訴)
- 事件の概要
- 会社では経営合理化のため間接部門の整理統合を行うこととなり、その結果、男子職員5名、女子工員10名の余剰がでたので女子工員については既婚者を中心に退職を求めることとした。
労働組合の了承を得て、女子について希望退職の募集を行ったところ、既婚者は原告を除く全員7名、未婚者2名が退職願を提出した。既婚者原告は昭和28年5月から被告会社に雇用され、機械事業部高崎工場に配属されていた。被告会社は退職願を提出しない原告に対し、昭和41年3月29日付内容証明郵便により、就業規則73条1項の「己むを得ない事業上の都合によるとき」に該当するとの理由で同年4月27日付で解雇する旨の意思表示をした。
原告は解雇が合理的理由を欠く等を理由に雇用契約上の地位確認を求めて訴えた。 - 主文
- 原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。 - 判決要旨
- 被告会社は企業存立のため、大胆な経営合理を行う必要に迫られており、高崎工場においては、間接部門を合理化して生産性の向上を図るには、工員10名を退職させ、又は解雇させるを得ない状況にあったものと認められる。人員整理の対象として既婚者を中心とする女子を選定したことは、人身整理自体が企業の運営上必要やむを得ない措置である以上は、(1)ないし(5)の理由((1)新機構案によって廃止、縮小された業務に従事していたのが大部分女子であること、(2)高崎工場で製造している製品の性格からして女子の就労に適する直接部門の職場がなく(当時直接部門で就労している女子工員は研削に従事する者1名のみであった)、したがって女子を直接部門に配置転換するのは困難であったこと。さらに、特に既婚女子(当時全部で8名であった)を対象とする理由としては、(3)右(1)の女子がたまたま大部分既婚女子であったこと、(4)従来女子工員は結婚すると退職する者がほとんどであり、そうでなくとも結婚後永くは在職しなかったこと、(5)既婚女子は通常夫と共稼ぎをしており、退職しても一応生活には困らないこと。)ことに夫の稼動している既婚女子が退職して被告から賃金を得られなくなることにより被る不利益がそれ以外の工員が退職した場合のそれに比して通常は少ないことを考えれば、合理的な措置であったと認めることができる。結婚退職制や女子若年定年制のように、既婚女子や高年齢女子を企業の具体的事情如何にかかわらず制度的に差別するものであれば格別、本件解雇の場合は、企業の合理化のための被用者を解雇する必要に迫られ、その対象者として諸般の事情を考慮した結果、解雇に最適な者として選ばれた者が既婚の女子である原告であったというのであるから、本件解雇は原告主張の憲法、労働基準法の各法案には違反しない。
- 適用法規・条文
- 02:民法90条
- 収録文献(出典)
- 労働関係民事裁判例集21巻6号1475頁、青木宗也ほか労働法律旬報769・770号3頁
- その他特記事項
- 本件は控訴された(No.49)。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
前橋地裁 − 昭和41年(ワ)第332号 | 請求棄却(原告敗訴) | 1970年11月05日 |
東京高裁 − 昭和45年(ネ)第2988号 | 控訴棄却(控訴人敗訴) | 1976年08月30日 |
最高裁 − 昭和51年(オ)第1240号 | 上告棄却(上告人敗訴) | 1977年12月15日 |