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F社雇用関係存続確認等請求控訴事件
- 事件の分類
- 解雇
- 事件名
- F社雇用関係存続確認等請求控訴事件
- 事件番号
- 東京高裁 − 昭和45年(ネ)第2988号
- 当事者
- 控訴人 個人1名
被控訴人 F株式会社 - 業種
- 鉱業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1976年08月30日
- 判決決定区分
- 控訴棄却(控訴人敗訴)
- 事件の概要
- 被控訴人F株式会社では経営合理化のため間接部門の整理統合を行うこととなり、その結果、男子職員5名、女子工員10名の余剰がでたので女子工員については既婚者を中心に退職を求めることとした。
労働組合の了承を得て、女子について希望退職の募集を行ったところ、既婚者は控訴人を除く全員7名、未婚者2名が退職願を提出した。
控訴人は昭和28年5月から同社に雇用され、機械事業部高崎工場に配属され業務に従事していたものであるが、同社は退職願を提出しない控訴人に対し、内容証明郵便により、就業規則の「己むを得ない事業上の都合によるとき」に該当するとの理由で解雇する旨の意思表明をした。
本件は、これに対し、控訴人が、解雇は合理的理由を欠き無効であることを理由に、雇用契約上の地位確認を求めた事件である。原審の前橋地裁は、人員整理は、諸条件を考慮して、最適の者として選ばれたのが既婚女子であったというのであるから合理的理由があると判断したが、これを不服として女子労働者が控訴したものである。 - 主文
- 本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。 - 判決要旨
- 高崎工場における機械製作の作業は、家庭電気製品のように女子の手仕事に依存する軽作業と異なり、機械の重量も相当あり、また作業の性質上油を多量に使用する関係上、身体が汚染しやすい筋肉労働であって、このような製品の特質や作業の性質からして、女子の労働に適しない(当時直接部門で就労していた女子工員は研削に従事する者1名のみであった)ので、合理化によって間接部門である女子工員の余剰が出たからといって、直ちに直接部門に配置換えすることは不可能であることが認められる。人員整理の対象となった控訴人ら女子の整理後、同人らが従事していた業務のすべてが廃止された事実はないけれども、その業務のある部分は廃止され、他の部分は簡素化されて、従来どおり1名をその業務に充てる必要がなくなって、他の係の業務と統合し、結果的にその業務がなくなり余剰が出たことが認められる。本件解雇は、企業合理化のため、人員殊に間接部門の従業員を整理する必要に迫られ、諸般の事情を考慮した結果、控訴人を解雇することになった事実が認められ、企業合理化に籍口した既婚女子の解雇であるということはできず、また憲法及び労働基準法に違反するものではない。
- 適用法規・条文
- 99:なし
- 収録文献(出典)
- 労働関係民事裁判例集27巻3、4号445頁、
判例時報838号87頁、
労働経済判例速報941号11頁、
労働判例271号55頁 - その他特記事項
- 本件は、上告された。原審(No.48)参照。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
前橋地裁 − 昭和41年(ワ)第332号 | 請求棄却(原告敗訴) | 1970年11月05日 |
東京高裁 − 昭和45年(ネ)第2988号 | 控訴棄却(控訴人敗訴) | 1976年08月30日 |
最高裁 − 昭和51年(オ)第1240号 | 上告棄却(上告人敗訴) | 1977年12月15日 |