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病院雇用関係存続確認等請求事件
- 事件の分類
- 解雇
- 事件名
- 病院雇用関係存続確認等請求事件
- 事件番号
- 佐賀地裁 − 唐津支部昭和45年(ワ)第19号
- 当事者
- 原告 個人2名
被告 病院 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1977年11月08日
- 判決決定区分
- 請求棄却(原告敗訴)
- 事件の概要
- 原告は、被告の経営する病院が設立された昭和32年から、看護部看護助手、あるいは給食部配膳係として勤務していたが、昭和44年12月1日病院からやむを得ない事業上の都合により解雇する旨の通知を受けた。
病院では、昭和42年から経営が悪化していたことから、昭和44年3月合理化計画を作成し、その中で間接部門の従業員の整理を決定し、これに基づいて昭和44年3月、男子60歳以上女子55歳以上を対象に自主退職者を募ったが、応募者はなかった。その後さらに交渉説得を続けたが、該当者の中で原告らは退職の意思表示をしなかったため解雇したものである。
原告らは解雇権の乱用、性別による差別待遇等を理由に解雇は無効として訴えた。 - 主文
- 原告らの請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。 - 判決要旨
- 昭和44年3月当時において、本件病院は九州各地の国立病院(中津、鹿児島、都城、久留米、佐賀、嬉野)に比較して、病床数、患者数の割に従業員数が大であり、かつ、従業員中においても間接部門に属する従業員の比率が大であったことが認められ、右の事実と経営の差損の事実を考え併せると、当時の本件病院においては間接部門の人員整理をすることは事実上やむを得なかったものを認めるのが相当である。原告らは本件解雇は、確たる具体的整理基準を示すことなく、かつ希望退職の募集、配置転換など解雇以外の方法を講ずることなく、労働協約上も就業規則上も定められていない定年制を実施したものであり、解雇の基準は妥当性を欠いていたと主張するが、本件病院の立地条件、設立の沿革と客観的環境の変化により生じた経営上の不利に基づいて本件病院の経営が悪化していた事実は前段認定のとおりであり、配置転換の余地のない原告らについて本件解雇にいたるまでなした被告側の措置が前段認定のとおりであって、合理化案作成後8ヶ月余の日時をおいて検討を重ねつつ本件解雇にいたった経過に徴すると本件解雇には、これを無効としなければならないほどの原告ら主張のような瑕疵を認めることはできない。原告らは本件病院において男子60歳、女子55歳を越えた者に退職を求めているのは、性別による差別待遇であり、本件解雇は無効であると主張するが、女子は骨格、筋力、赤血球数、血色素量、反応時間等からみてその体力は男子に比して劣っており、25種の生理的機能検査の結果を平均値で年齢毎に表わすと、女子は50歳から55歳までの間において生理的機能が著しく低下し、55歳の女子の機能は70歳以上の男子のそれにほぼ等しいものとされていることが認められる。右の事実と本件病院における原告ら職種は所謂単純労働であって、その作業は短期間に習得でき、年月の経過と共に熟練の度を加えてゆく性質のものでないこと、本件病院においては年功序列式の賃金体系をとっているので、提供される労働と支払われる賃金は年月の経過と共に次第にバランスを失って行くことを併せ考えると、本件解雇の際の整理基準は本件病院の実情に照らし合理性があると解するのが相当であり、従って男女差別は公序良俗に反するから本件解雇は無効であるとする原告らの主張は採用しない。
- 適用法規・条文
- 99:なし
- 収録文献(出典)
- 労働関係民事裁判例集28巻5・6号496頁、
労働判例286号69頁、
判例時報881号149頁、
労働経済判例速報968号3頁、
労働法律旬報952号75頁、
中村和夫・労働判例310号4頁、
中村和夫・労働判例308号27頁 - その他特記事項
- 原告らが福岡高裁に控訴後、昭和58年1月21日、解雇の撤回、和解金の支払いで、和解が成立した。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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