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S堂地位保全等仮処分申請事件
- 事件の分類
- 解雇
- 事件名
- S堂地位保全等仮処分申請事件
- 事件番号
- 東京地裁 − 昭和41年(ヨ)第2329号
- 当事者
- 申請人 個人1名
被申請人 S堂 - 業種
- 卸売・小売業・飲食店
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1967年12月19日
- 判決決定区分
- 申請一部認容(申請人一部勝訴)
- 事件の概要
- 申請人は、S堂という商号で洋菓子類の製造・販売並びに喫茶店の経営を営む被申請人にパートタイマーとして、昭和40年3月19日から雇用され、翌昭和41年1月26日被申請人から退職を迫られたが拒絶し、同年3月24日1ヶ月分の予告手当を提供され解雇の意思表示がなされた。
これに対し、申請人は、被申請人に対して雇用契約上の地位を有すること等の仮処分を求めて、本件申請をした。 - 主文
- (1)被申請人は、申請人に対し、昭和41年4月1日から本案判決確定に至るまで毎月末日限り金9,375円を、仮に支払え。
(2)申請人のその余の申請を却下する。
(3)訴訟費用は、被申請人の負担とする。 - 判決要旨
- 俗にアルバイトとかパートタイマーとか称されている労働者の地位は、一般に日雇いないし臨時雇いの類が多いことは否定できず、その身分関係も極めて不安定で、使用者の一方的な都合によって容易に解雇されている実情にあることも多言を要しないけれども、アルバイトと称し、パートタイマーと云っても、当該労働者が常に日雇いないし臨時雇いであると断定するのは軽率であり、原則として、その個々の雇用契約成立の時の状況や、契約期間ないし従事すべき職務の内容その他の契約条項並びにその勤続期間、その他諸般の事情を勘案して、これが期間の定めのない雇用契約であるか、それとも臨時雇いや日雇の類いであるかを決定すべきものというべきである。本件においては、申請人は、臨時の仕事のために補充的に雇い入れられた日雇又は臨時の従業員に該当しないことは勿論、季節的業務に従事する労働者ないし試用期間中の労働者でないことも明らかであり、却って、被申請人の恒常的な業務のために恒常的に雇入れられた従業員であって、当初から相当長期間雇用関係の継続することを当該者双方が予定し、しかも解雇通知を受けるまで約1年間の期間が存在したものであって見れば、その契約関係はいわゆる一般の期間の定めのない雇用契約であったと見るのが相当である。申請人の雇用関係が期間の定めのない一般の雇用契約である以上、パートタイマーであるからと云って、何時でも自由に何の理由もなく経営者の一方的な意思表示によって雇用関係が終了すると解するのは不当である。被申請人がパートタイマーを大量に解雇するに至った本当の理由は、余り歓迎できないと考えた申請人をS堂から排除するという目的に出でたもので(パートタイマーの内、先ず、申請人と訴外Aに対して昭和41年1月中に解雇の申入を行い、申請人の抵抗に遭うや、同年二月中に訴外B及び訴外Cを辞めさせ、同年三月末には訴外Dも辞めて貰うに至ったのである。)、他の解雇者の中には、申請人の道連れにされてしまった者もあったのではないかと見受けられるところであって、真にパートタイマーを整理する経営上の必要はなかったものと見るのが相当であり、従って申請人の解雇は、何等解雇の理由のないものであって、解雇権の濫用であると推定せざるを得ないから、被申請人のした申請人解雇の意思表示は無効であるといわなければならない。解雇の無効を前提とする労働者からする仮処分申請の場合、賃金の仮払を命ずる仮処分が発せられる以上、更に任意の履行を期待する仮処分を発することは、原則として必要でないと解するものである。
- 適用法規・条文
- 99:なし
- 収録文献(出典)
- 労働関係民事裁判例集18巻6号1251頁
- その他特記事項
- なし。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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