判例データベース
T社労働契約存在確認等請求控訴事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- T社労働契約存在確認等請求控訴事件
- 事件番号
- 東京高裁 − 昭和43年(ネ)第1844号、東京高裁 − 昭和43年(ネ)第1891号
- 当事者
- 被控訴人 個人5名
附帯控訴人 個人5名
控訴人 個人2名
控訴人 T株式会社
被控訴人 T株式会社
附帯被控訴人 T株式会社 - 業種
- 製造業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1970年09月30日
- 判決決定区分
- 控訴棄却、原判決一部変更(労働者側一部勝訴)
- 事件の概要
- 控訴人(昭和43年(ネ)1844号)・被控訴人兼附帯被控訴人(昭和43年(ネ)1891号)は電気機器等の製造販売を目的とする株式会社であり、Aは昭和35年1月、Bは昭和34年11月、Cは昭和33年12月、Dは昭和35年11月、Eは昭和34年1月、Fは同年3月、Gは同年4月、それぞれ会社に入社した。労働者らは、いずれも入社当時会社と契約期間を2ヶ月と記載してある臨時従業員として労働契約書を取交わしてその従業員となり、その後、会社は、Aについて5回、Bは6回、Cは12回、Dは15回、Eは22回、Fは21回、Gは23回にわたって右契約を更新したが、各人に対しそれぞれの期日に、期間満了日をもって右契約更新の拒絶の意思表示をなし、満了日後の就労を拒否している。
原審は労働者らは会社に対し、いずれも労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び各金員を求めて、提訴し、ABDEF5名の請求が認容され、解雇は無効とされ、CG両名の請求は棄却された。
これに対し、会社側がABDEFに対し控訴し、ABDEFが附帯控訴し、CGが会社を控訴したのが本件である。 - 主文
- 一、第一審被告の第一審原告A、同B、同D、同E、同Fに対する控訴を棄却する。
二、前項の各第一審原告らの附帯控訴による請求拡張にもとづき、原判決主文第二項中右各第一審原告らに関する部分を次のとおり変更する。
1、第一審被告は第一審原告B、同D、同Eに対しそれぞれ別紙賃金表(3)の(B)欄中各該当部分記載の金員および昭和43年9月以降職場復帰に至るまで毎月26日かぎり別紙賃金表(4)の(C)欄中各該当部分記載の金員を支払え。右第一審原告らその余の請求を棄却する。
2、第一審被告は第一審原告A、同Fに対し別紙賃金表(3)の(A)欄中各該当部分記載の金員および昭和43年9月以降職場復帰に至るまで毎月26日かぎり別紙賃金表(4)の(C)欄中各該当部分記載の金員を支払え。
右第一審原告らその余の請求を棄却する。
三、第一審原告Cの第一審被告に対する控訴および当審における拡張請求を棄却する。
四、第一審原告Gの控訴および請求拡張にもとづき
1、原判決中同第一審原告に関する部分を取り消す。
2、同第一進原告が第一審被告に対し雇用契約上の権利を有することを確認する。
3、第一審被告は同第一審被告に対し別紙賃金表(3)の(B)欄中該当部分記載の金員および昭和43年9月以降職場復帰に至るまで毎月26日かぎり別紙賃金(4)の(C)欄中該当部分記載の金員を支払え。
4、同第一審原告その余の請求を棄却する。
五、訴訟費用は第一審原告Cと第一審被告との間においては第一、二審とも同第一審原告の負担とし、同第一審原告を除くその余の第一審原告と第一審被告との間においては第一、二審とも第一審被告の負担とする。
この判決中金員支払を命じた部分については仮に執行することができる。 - 判決要旨
- 会社との間の本件労働契約においては、契約期間を2ヶ月と定めた契約書が取交わされてはいても、右期間満了時に右契約が終了すべきことは必ずしも当事者双方とも予期するところでなく、むしろ、会社としては景気変動等の原因による労働力の過剰状態を生じない限り契約の継続することを期待し、原告らとしても勿論引続き雇用されることを期待していたものであって、実質においては当事者双方とも、期間の定めは一応あるが、いずれかから格別の意思表示がなければ当然更新せらるべき労働契約を締結する意思であったものと解することが相当と認められる。(臨時工に適用せらるべき臨時従業員就業規則中解雇の規定が設けられ、その解雇原因のうちに雇用期間の満了が挙げられていることからしても十分推断できることである。)
そうだとすると本件各労働契約は、契約当初及びその後しばしば形式的に取交された契約書に記載された2ヶ月の期間の満了する毎に終了することはなく、当然更新を重ねて、恰も期間の定なき契約と実質的に異ならない状態で存続していたものといわなければならない。(右更新を妨ぐべき意思表示中会社側のするものを以下傭止めの意思表示と称する。)会社はこのような契約関係にある原告ら基幹臨時工に対して適用すべき臨時従業員就業規則(以下臨就規と称する)を定めており、これにもとづき原告らに対しそれぞれ将来労働契約を継続せしめず契約を終了させる趣旨の下に本件傭止めの意思を表示したこと前示のとおりであるから、これは実質上臨就規にいわゆる解雇の意思表示にあたるものと認めざるを得ない。臨時工に適用すべき臨就規には、原判決別紙記載の解雇事由が定められていて、このような場合解雇事由はこれに限定され、会社はこれに該当しなければ解雇しない趣旨に自ら解雇権を制限したものであるとみるべく、また理論上、右事由に形式的に該当するときでも、それを行使すること著しく苛酷にわたる等相当でないときは、会社は解雇権を行使し得ないと解するのが相当である。Gに対し会社の主張する理由は、作業成績不良および東芝商事への転勤拒否である。
Gの成績不良が臨就規に定められた解雇基準の何れかに該当するものと断定することはできない。
またT商事に転出するようにとの会社の配慮を拒否した事実があってもこれをもって解雇基準に該当するものとすることはできないことは多言を要しない。
したがって同人に対する傭止めは効力がない。その他見習期間中における被控訴人の勤務態度に誠実さを欠くとか、協調性に乏しいとかの事実を認めるに足りる何等の疎明もない。控訴人の被控訴人に対する本件解雇は正当な理由がないのになされたものであり、契約の信義則に反するものであって、権利の乱用として無効であるから、被控訴人と控訴人との間の昭和42年4月1日付雇用契約は継続していることは明かである。原判決理由雇用契約の性質について判断したところからして、控訴人は被控訴人を正社員たる資質を有しないものとして解雇することが許されない以上、これを正社員に昇任する義務があるものと解されるから、控訴人は見習期間が経過した昭和42年10月1日をもって被控訴人を正社員とする旨の発令をなすべきものである。 - 適用法規・条文
- 99:なし
- 収録文献(出典)
- 判例時報606号3頁、労働経済判例速報724号10頁、労働法律旬報755号4頁
- その他特記事項
- 本件は上告された(No.61)。原審(No.59)参照。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
横浜地裁 − 昭和38年(ワ)第500号 | 請求一部認容(原告一部勝訴) | 1968年09月19日 |
東京高裁 − 昭和43年(ネ)第1844号、東京高裁 − 昭和43年(ネ)第1891号 | 控訴棄却、原判決一部変更(労働者側一部勝訴) | 1970年09月30日 |
最高裁 − 昭和45年(オ)第1175号 | 上告棄却(上告人敗訴) | 1974年07月22日 |