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J学園雇用関係存続確認等請求控訴事件

事件の分類
解雇
事件名
J学園雇用関係存続確認等請求控訴事件
事件番号
東京高裁 − 昭和47年(ネ)第1758号
当事者
控訴人 個人1名
被控訴人 学校法人J学園
業種
サービス業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1975年12月16日
判決決定区分
控訴棄却(控訴人敗訴)
事件の概要
被控訴人は、女子中学校同高等学校を設置経営する学校法人であり、控訴人は、理科教諭として雇用され、昭和43年4月以降理科専任講師となり右高等学校で生物、化学の授業を担当していた女性教員である。被控訴人が控訴人に対し30日分の平均賃金を提供して解雇の意思表示をしたので、控訴人は被控訴人に対し右解雇は権利の濫用で無効であると主張し、(2人)被控訴人は控訴人には職務上の義務違反があり改善の見込がなく学園の統制上在職を許さないので解雇したと争った。原判決は、(1)学園高等学校が履修単位の習得につき理科系科目に重点を置くAコース、文科系課目に重点を置くBコース、多くの選択教科を含め全科目を平均して履修するCコースを設け、生徒間ではA、Bコースを進学コースと呼んでいるところ、進学コースのクラスにつき化学の授業担当中控訴人が生徒の発言に関連してコース制は劣等感を植えつける悪い方法であると批判したこと、(2)控訴人が生徒の成績評価につき5段階評価法を採用せず生徒の自己評価を参考にした独自の成績評価をしたこと、(3)生徒総会を一時混乱させたこと、(4)始業時間に関する指示を無視したこと、(5)清掃に関する生徒指導を阻害したこと、(6)下校に関する生徒指導を怠ったこと、(7)許可なく物品を購入したことを認め、いずれも就業規則にいう職務上の義務違反に該当し個々的には解雇の事由とするに足りなくても、総合的に見れば控訴人は被控訴人の教師として不適格で学園の統制上在職を許されないものであるから、被控訴人が就業規則に基づき控訴人を解雇したのは解雇権の濫用といえないとして控訴人を敗訴させた。
これに対し、女性教員側が控訴した。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
判決要旨
控訴人が(1)コース制を批判したこと。(2)5段階評価法によらない成績評価をしたこと。(3)生徒総会を混乱させたこと。(4)始業時間に関する指示を無視したこと。(5)清掃に関する生徒指導を阻害したこと。(6)下校に関する生徒指導を怠ったこと。(7)許可なく物品を購入したこと等の解雇理由はいずれも被控訴人学園の教師としての職務上の義務に違背するものということができる。もっともこれらの事由を個々的にみれば解雇の事由とするには乏しいと見られないではないが、私立学校にはそれなりの伝統校風・教育方針が存在するのであって、これらを承知の上雇用関係に入ったものは学校の定める諸規則・教育方針に従うのは当然のことであり、自己の抱懐する教育観ないし教育方針に副わない点があれば正規の方法によりこれが検討是正を求めるのはかくべつ、これを教育の場ないし自己の分掌外において実践することは許されないものといわなければならない。従って、前示控訴人の行為を総合すると右は被控訴人の諸規則及び教育方針を敵視する態度の表現とみるべきであり、加うるに勤務状態不良の事実もあるので、控訴人は被控訴人学園の教師として不適格であり、且つ改善の見込もなく、また学園の統制上在職を許されないものと認められるから、被控訴人が就業規則第33条、第36条に該当するものとして、解雇予告手当として平均賃金30日分を提供してなした本件解雇は合理的な理由があり、有効であって、権利の濫用には当たらないものといわなければならない(なお本件解雇が控訴人の労働組合結成の準備に参加する行為を嫌悪してなされたものとする証拠は全くない)。
適用法規・条文
99:なし
収録文献(出典)
判例時報807号94頁、労働判例246号67頁
その他特記事項
本件は当審で確定した。原審(No.75)参照。