判例データベース

前橋セクシュアルハラスメント(幼稚園)慰謝料請求事件

事件の分類
セクシュアル・ハラスメント
事件名
前橋セクシュアルハラスメント(幼稚園)慰謝料請求事件
事件番号
前橋地裁 − 平成6年(ワ)第89号
当事者
原告 個人1名
被告 個人1名
業種
サービス業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1994年09月30日
判決決定区分
請求一部認容(原告一部勝訴)
事件の概要
原告は平成5年7月当時46歳の女性で群馬県村立A幼稚園(以下「本園」という。)の主任教諭であった。被告は右当時60歳の男性であり、平成5年4月1日付けで嘱託として本園の園長に就任した。平成5年7月13日、原告が帰宅しようとしたところ、被告が原告に更衣室で抱きついてきたり(以下「本件行為」という。)、その後も勤務中、近づいてきたり一緒に山に行こうなど誘ったりしたため、原告はこのような被告の態度に嫌悪感を強く感じ2人きりにならないよう神経を使わざるを得なくなり、同年11月には不眠症に悩まされるといった健康上の障害が発生するに至った。

そこで、同年11月26日、原告は教育長に訴え、聞き取り調査が行われたが、被告は原告が嘘をついていると主張、話は平行線を辿った。
そのため、原告は、被告からその意に反して本件行為がなされたことや上司の地位を利用して不当な要求をされたとして右行為は原告の人格権および労働権を侵害する不法行為に該当するとして、金100万円の慰謝料の支払を求めて、提訴した。
主文
一 被告は、原告に対し、金10万円及びこれに対する平成6年3月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを10分し、その9を原告の、その余を被告の各負担とする。
判決要旨
本件行為は、その行われた場所・状況・時期等を考慮すると、被告から原告に対する単なる儀礼的若しくは社交的範囲を越えた性的行為と解せられ、両者の年齢、職場における地位、家族関係(双方とも配偶者を有する。)及び原告の了解がないこと等を勘案すると、原告の人格権を侵害する不法行為に当たると認められる。原告が本件行為によって被った損害について検討する。
原告が本件行為後にこれに対する精神的苦痛を明確に意識し、身体の不調を感じるまでの間には約3ヶ月の時間が経過していることが認められ、また、本件全証拠によるも、原告が被告の誘いを拒否したことを理由に、被告がその職務権限を利用して、原告に対し職務遂行上不利益を与えたり、労働環境を悪化させるような具体的な措置を取ったり行動に出たことを認めることはできず、その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、原告に対する慰謝料は、金10万円が相当であると判断する。
適用法規・条文
02:民法709条
収録文献(出典)
労働判例707号37頁
その他特記事項
なし。