判例データベース
奈良県市役所事件
- 事件の分類
- セクシュアル・ハラスメント
- 事件名
- 奈良県市役所事件
- 事件番号
- 奈良地裁葛城支部 − 平成7年(ワ)第334号、奈良地裁葛城支部 − 平成7年(ワ)第285号
- 当事者
- 原告個人1名(本訴原告、反訴被告)
被告個人2名(反訴原告、本訴被告) - 業種
- 公務
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1997年08月07日
- 判決決定区分
- 本訴請求認容(本訴原告勝訴)・反訴請求棄却(反訴原告敗訴)
- 事件の概要
- 原告は、平成2年4月、市役所事務職員に採用され、当初の配属後、採用直後から腰椎椎間板ヘルニアの理由で欠勤を続け、同年10月ころから、同病名により、同年12月中旬まで病気休暇中であったが、その間、同年10月20日付けの人事異動により、被告らの所属部署である税務部資産税課に配置換えとなり、同年12月中旬ころより、勤務を開始した。
被告Aは、税務部資産税課課長であり、被告Bは、当時同課係長であり、現在は同課課長補佐の地位にある。
被告Bはしばしば原告の胸、尻、髪等の身体を触り、また、原告に対し、性的発言をしたり、個人的なことを根堀り葉掘りきいたり、宴会では抱きつくなどの行為をしていた。まだ、被告Aは、被告Bの言動を認識していながら、何ら注意を与えず、かえってはやし立てたり、自ら原告に対し性的発言や差別発言等を行った。
このため、原告は被告らの不法行為により、精神的苦痛を被りそれが一因で抑うつ状態になり、休職するに至ったとして、被告Aに対し、慰謝料150万円、被告Bに対し慰謝料100万円、弁護士費用相当額金35万円及び遅延損害金の支払を求めて、被告A及びBを提訴した。
これに対し、被告らは、原告の主張する被告らのセクハラ等の行為は全て事実無根であるとともに、多大の精神的苦痛を被ったとして、反訴を提起した。 - 主文
- 一被告(反訴原告)Aは、原告(反訴被告)に対し、金150万円及びこれに対する平成7年11月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を、被告(反訴原告)Bは、原告(反訴被告)に対し、金100万円及びこれに対する平成7年11月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を、それぞれ支払え。
二被告(反訴原告)らの反訴請求をいずれも棄却する。
三訴訟費用は、本訴・反訴とも被告(反訴原告)らの負担とする。
四この判決は原告(反訴被告)勝訴部分に限り仮に執行することができる。 - 判決要旨
- 原告の主張の被告らの各発言内容や行為の態様・程度・期間、原告と被告らとの職場における地位や上下関係、被告らの役職等に照らせば、被告らの前記言動が、原告の人格権を著しく侵害するものであり、不法行為を構成することは明らかである。原告の供述及び弁論の全趣旨によれば、原告は、被告らの不法行為により、精神的苦痛を被り、それが一因で、医療法人において、抑うつ状態(反応性うつ病)との診断を受け、平成6年1月から休職し、現在に至っていることが認められる。
被告らは、民法709条により、原告の被った精神的損害に対する慰謝料を支払う義務があるところ、本件不法行為の態様・程度・期間、原告と被告らとの職場における地位や関係、被告らの役職、原告の年齢(昭和45年2月15日)、精神的苦痛の程度その他諸般の事情を考慮し、原告が賠償を求めうる慰謝料額は、被告Aに対しては金150万円、被告Bに対しては金100万円が相当であると認められる。被告らの不法行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害額は、金30万円であると認められる。原告の主張の被告Bの発言については、若干軽率かつ不謹慎な発言ではあるにしても、未だ、不法行為責任を負う程度の内容とはいえない。 - 適用法規・条文
- 02:民法709条
- 収録文献(出典)
- なし。
- その他特記事項
- なし。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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