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A社未払賃金請求上告事件

事件の分類
その他
事件名
A社未払賃金請求上告事件
事件番号
最高裁 − 昭和55年(オ)第626号
当事者
上告人 個人4名
被上告人 A株式会社
業種
製造業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1985年07月16日
判決決定区分
上告棄却(上告人敗訴)
事件の概要
上告人らは、いずれも被上告人A株式会社に勤務し、機械による織布作業に従事していた。同社では、精皆勤手当の支払いについて「出勤不足日数のない場合5,000円、出勤不足日数1日の場合3,000円、同2日の場合1,000円、同3日以上の場合なし」としていた。上告人らは、昭和46年10〜11月に生理休暇を2日間取得したため、会社は同年11月期の精皆勤手当のうち4,000円をカットして、1,000円のみ支給した。本件は、これに対し上告人らが、同手当の減額分について支払を求めた事件で、原審の東京高等裁判所は、精皆勤手当の支払いについて、生理休暇取得日数を欠勤日数に算入することに女子労働者と会社との間に黙示の約束があったことを認め、その約束を適法であると判断したが、これを不服として女子労働者側が上告したものである。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
判決要旨
(1)労働基準法(旧)67条は、生理休暇の請求により女子労働者がその間の就労義務を免れ債務不履行の責めを負わないことを定めたにとどまり、生理休暇が有給であることまでも保障したものではなく、(2)生理休暇取得日を出勤扱いにするか欠勤扱いにするかは原則として労使間の合意に委ねられているものと解されること、(3)生理休暇の取得を欠勤扱いとされることによって経済的利益を得られない結果となるような措置・制度は、その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、生理休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、生理休暇の取得を著しく困難とし、労働基準法が生理休暇の規定を設けた趣旨を失わせるものと認められるものでない限り労働基準法(旧)67条に違反するものではない。本件における約束についても、所定の要件を欠く生理休暇及び自己都合欠勤を減少させて出勤率の向上を図ることを目的としたものであること等の理由から労働基準法(旧)67条等に違反するものとはいえず、無効とすべき理由はない。
適用法規・条文
07:労働基準法(旧)67条
収録文献(出典)
最高裁判所民事判例集39巻5号1023頁、判例時報1168号150頁、判例タイムズ568号52頁、労働判例455号16頁、西村健一郎・民商法雑誌96巻1号93頁、大脇雅子・ジュリスト849号40頁、中島士元也・ジュリスト897号113頁
その他特記事項
地裁判決(No.117)、控訴審(No.118)参照。