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T社未払い賃金等支払請求事件

事件の分類
その他
事件名
T社未払い賃金等支払請求事件
事件番号
東京地裁 - 昭和49年(ワ) 第2644号
当事者
原告 個人9名
被告 株式会社
業種
製造業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1976年11月12日
判決決定区分
請求却下・請求棄却(原告敗訴)
事件の概要
(被告)T株式会社(電子計測器メーカー)は、生理休暇に関し昭和49年1月就業規則の改定を行い、従来、「女子従業員は毎月生理休暇を必要日数だけとることができる。そのうち年間24日を有給とする」と定めていたものを「女子従業員は毎月生理休暇を必要日数だけとることができる。そのうち月2日を限度とし、1日につき基本給1日分の68%を補償する」としたが、これに対し、8名の女子労働者が(1)生理休暇問題については合意が成立せず、したがって協定化されていないにも拘わらず被告は就業規則の変更を行ったものであるから、労働協約に違反してなされた本件就業規則の変更は、組合員である原告らには効力を及ぼさないものである、(2)また当該就業規則の変更は、原告ら女子従業員の既得の権利を奪い、一方的に労働条件を不利益に変更するものであるから、原告らに効力を生じない、として減額された生理休暇の手当についての支払を求めたものである。
主文
一 原告らの各確認請求をいずれも却下する。
二 原告らの各給付請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は原告らの負担とする。
判決要旨
「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないと解すべきであり、これに対する不服は、団体交渉等の正当な手続による改善にまつほかはない。」(最判昭和43年12月25日最高裁判所民事判例集22巻3459頁)「女子従業員は毎月生理休暇を必要日数だけとることができる。そのうち年間24日を有給とする。」との就業規則条項の後段を、「そのうち月2日を限度とし1日につき基本給1日分の68パーセントを補償する。」と変更したことに合理的根拠が認められ、これに同意しない労働者に対してもその効力を及ぼすとした事例。原告らの確認請求は、具体的権利関係についての確認を求めるものではなく、原告らが旧規定の適用を受けるべきものであるとの就業規則変更に関する解釈を求めるものであって、確認の訴の対象とはならないから、不適法な訴として却下すべきものである。
適用法規・条文
99:なし
収録文献(出典)
労働関係民事裁判例集27巻6号635頁、労働判例264号27頁、労働法律旬報920号50頁、判例時報842号114頁、労働経済判例速報932号3頁
その他特記事項
控訴審(No.121)、上告審(No.122)、差し戻し審(No.123)参照。