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千葉不動産会社事件

事件の分類
セクシュアル・ハラスメント
事件名
千葉不動産会社事件
事件番号
千葉地裁 − 平成8年(ワ)第1057号
当事者
原告 個人1名
被告 A株式会社
被告 個人B
業種
不動産業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1998年03月26日
判決決定区分
請求認容(原告勝訴)
事件の概要
被告会社Aは不動産業を営み、被告B(昭和30年生まれ)は被告会社Aの代表取締役である。
原告(昭和49年生まれ)は被告に事務員として、平成8年3月24日、雇用された。
被告会社の従業員は、他に、営業部長訴外C(男性)、訴外経理事務員(女性)がいた。
被告Bは、パソコン画面に男女の裸の姿を出して原告に見せたり(同年3月28日)、事務所で抱きついたり、胸や腰に触れたり、スカートの中に手を入れる等、原告が抗議するにもかかわらず、執拗にこれを繰り返した。また、同年4月12日、被告Bは、Cと原告を食事に誘い、その後、気分の悪くなった原告をモーテルに連れ込み、性交渉を強要した。この件につき、原告が抗議したのに対し、被告Bは、暗に退職を求め、結局、原告は同年4月28日、被告会社を退職した。
原告は、被告Bから性交渉を強要されるなど様々なセクハラ行為を受けたとして、代表取締役である被告B個人に対しては不法行為を理由に、勤務先会社に対しては不法行為及び債務不履行(職場環境の調整義務違反)を理由に、それぞれ損害賠償として慰謝料と弁護士費用を求めて提訴した。
主文
一 被告らは、各自、原告に対し、金330万円及びこれに対する平成8年6月21日から完済に至るまで年5分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告らの負担とする。
三 この判決は、仮に執行することができる。
判決要旨
被告は、原告に対し、原告の意に反した様々な性的言動を繰り返した挙げ句、性交渉にまで及んで原告の性的自由を侵害し、その結果原告に被告会社からの退職を余儀なくさせたものと認められるのであって、その行為は原告に対する不法行為というべきであり、これにより原告の被った損害を賠償すべき責任が存する。被告は被告会社の代表取締役であるところ、同被告の原告に対する不法行為は、被告会社の事務所内で勤務時間中に行われたり、あるいはそれに引き続いた時間と経過の中で行われたもので、その態様も被告が被告会社の代表者であり、原告はその従業員であるという関係を利用して行われたものと評価でき、また4月12日の件について抗議する原告に対して暗に退職を求めた言動は、まさしく被告会社の代表者としての行為であって、いずれの行為についても、被告がその職務を行うにつきなされたものということができる。したがって、被告会社もまた、商法261条3項、78条2項、民法44条1項により、原告に対し損害賠償責任を負うものである。被告らによる不法行為の内容、原告の受けた被害の内容と程度、さらにこれにより被告会社からの退職を余儀なくされたことなどによる原告の被った精神的苦痛、そして原告の抗議に対する被告らの誠意に欠ける対応など、諸般の事情を考慮すると、その精神的損害に対する慰謝料として原告が請求する300万円は相当なものと認められる。
また、本件事案の内容や経過等に照らせば、被告らに負担させる弁護士費用として原告の請求する30万円も相当と認められる。
適用法規・条文
02:民法709条,02:民法44条1項,06:商法261条3項,06:商法78条2項
収録文献(出典)
判例時報1658号143頁、判例タイムズ988号239頁
その他特記事項
なし。