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石川セクシュアルハラスメント(市森林組合)損害賠償請求事件

事件の分類
セクシュアル・ハラスメント
事件名
石川セクシュアルハラスメント(市森林組合)損害賠償請求事件
事件番号
金沢地裁輪島支部 − 平成8年(ワ)第32号
当事者
原告 個人1名
被告 個人1名
業種
サービス業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1999年02月15日
判決決定区分
請求一部認容
事件の概要
原告は、昭和54年11月1日から平成8年10月9日まで市森林組合(以下森林組合という。)に勤務していた者である。

被告は、原告が就職した当初から、原告を執拗に侮辱したり、職場内で孤立する状態に置いた。また、昭和61年ころから、被告は、夜、酒場から、電話で原告を脅しながら呼び出し、応じないと翌日職場で原告に嫌がらせをしたり、さらに、昼休み外出させないなどした。原告は、平成3年12月に、被告の嫌がらせに耐え切れず、退職願いを提出したところ、被告が責任を感じて役員に受理されないようにしたものの、その後、さらに電話で原告を誘うようになり、原告はノイローゼ気味になった。また、職場でも、被告は原告に言い寄り、胸や肩、臀部に触ったり、モーテルに誘ったり、脅すようなこともあった。

被告が原告と同じ課の課長になり、平成8年5月、夜、懇談会の酒場から原告を脅かして呼び出し、そこで、モーテルに誘い、原告が拒否すると、翌日から、大量の仕事を回し、原告は心身共に疲労がたまり、病院で治療をうけるに至った。

原告は、平成8年10月9日、森林組合を退職した。
原告は、被告に対し、被告の不法行為により、原告は退職せざるをえなくなったので、退職しなかったら得たであろう逸失利益7797万7480円及び慰謝料500万円を求めて、提訴した。
主文
一 被告は原告に対し、金500万円及びこれに対する平成8年12月28日から支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを100分し、その6を被告、その余を原告の負担とする。
判決要旨
原告の森林組合からの退職は、原告にとってはやむを得ないものであったにしても、勤務先の森林組合から退職を要求されたわけではないので、未だ客観的にやむを得ないものとは言い難い。右認定に係る事実によれば、被告の原告に対する嫌がらせ行為の中には侮辱罪、脅迫罪、強要未遂罪に該当するものも見受けられるので、被害を受けた者としては、職場の上司に相談しても効果がなければ、捜査機関や人権問題の取扱部門で相談をするなどして社会的に然るべき手段を採るべきであり、それを怠って安易に退職の途を選んだ後に定年に達するまでの逸失利益を加害者に請求するのは、むしろ一般的に意外な進展を示す事柄と言うべきである。結局のところ、被告の行為と原告の退職との間に相当因果関係があったことを認めるのは難しい。被告の原告に対する行為の態様及び前掲各証拠によって認められる原告の精神的苦痛状態を考慮すると、原告の精神的苦痛は、原告の請求する金額をもって慰謝されるのが相当である。
適用法規・条文
02:民法709条
収録文献(出典)
なし。
その他特記事項
なし。