判例データベース
仙台セクシュアルハラスメント(B大学)損害賠償請求事件
- 事件の分類
- セクシュアル・ハラスメント
- 事件名
- 仙台セクシュアルハラスメント(B大学)損害賠償請求事件
- 事件番号
- 仙台地裁 − 平成10年(ワ)第73号
- 当事者
- 被告 個人1名
原告 個人1名 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1999年06月03日
- 判決決定区分
- 請求一部認容(原告一部勝訴)
- 事件の概要
- 原告は、B大学生活美術学科を平成8年3月に卒業し、同年4月に副手に採用された。被告は、同学科の教授で原告が在学中の指導教員であった。訴外CはB大学同学科を平成3年に卒業後中学校教員をしていたが、被告に許可されて大学に出入りし、被告の指導を受けながら、制作活動をしていた。平成8年5月ころ、被告の紹介により、原告とCは知り合い、交際するようになった。同年8月15日、Cは原告の実家を訪ね、原告がCを婚約者として家族に紹介した。
同月16日午後9時過ぎ、原告は、被告に呼び出され、駅まで迎えに行くと、原告は人気のない場所で被告から強姦された(本件事件)。
原告は、同月18日から2泊3日でのゼミ合宿に参加し、Cに本件事件を打ち明け、23日、両親とCとともに、警察に届出た。しかし、告訴に至らず、告訴期間の経過により、被告は、刑事責任を問われていない。被告は、本件大学によって、自主退職勧告がなされ、自宅謹慎処分を受けたが、被告は本件行為は原告との合意によるものと主張し、平成9年2月3日、戒告処分を受けたのみである。
原告は、被告に対し、不法行為による損害賠償請求として、慰謝料1000万円及び弁護士費用177万円と遅延損害を求めて、提訴した。 - 主文
- 一 被告は、原告に対し、金700万円及び内金600万円に対する平成8年8月16日から、内金100万円に対する平成10年2月14日から各完済に至るまで、各年5分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを5分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
四 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 - 判決要旨
- 原告には、Cという婚約者がおり、右Cともども、被告を教師として信頼し、尊敬もしていたものである。
それにもかかわらず、被告は、このような信頼を裏切ったばかりか、原告とCとの交際の事実も知りながら、教授と副手との立場を利用し、原告を夜間に呼び出し、Cへの嫉妬に駆られたあげく、本件行為に及んだものであり、これによって被った原告の精神的苦痛が筆舌に尽くしがたいものであることは容易に推察することができる。
さらに、被告は、その後も、自己の過ちを認めないばかりか、原告が、混乱した精神状態の下で本件メモ(原告から被告に対し送られた「先生、私馬鹿でした。先生が1番よくわかったと思います。なんだか人を殺して捕まった気分です。(中略)先生、本当にごめんなさい。」とのメモのこと)を作成したのを奇貨として、これを用いて原告の両親やCに虚偽の事実を申し向けて同人らを誤解させ、原告を孤立化させる結果となったことによって、さらなる苦痛を与えた上、その後も反省の色は窺えず、このような被告の行為態様は極めて悪質である。
これに加えて、被告は、刑事訴追を免れる一方、本件大学からの自主退職の勧告にもかかわらず、依然として教授の職に留まり続け、本件大学からの戒告処分以外には格別の社会的制裁は受けておらず、その上、原告に対する慰謝は何らなされていない状況にある。
以上の事情を総合考慮すると、本件における原告の精神的損害に対する慰謝料としては、600万円をもってするのが相当であり、その弁護士費用としては、100万円とするのが相当である。 - 適用法規・条文
- 02:民法709条
- 収録文献(出典)
- なし。
- その他特記事項
- なし。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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