判例データベース
横浜セクハラ短期大学控訴事件
- 事件の分類
- セクシュアル・ハラスメント
- 事件名
- 横浜セクハラ短期大学控訴事件
- 事件番号
- 東京高裁 − 平成10年(ネ)第1781号
- 当事者
- 原告 個人1名B
被告 個人1名E - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 1999年06月08日
- 判決決定区分
- 原判決変更(控訴人一部勝訴)
- 事件の概要
- Bは、神奈川県立A短期大学の教授であり、Cは同大学の名誉教授(平成6年3月まで教授)であり、Dは同大学の助教授である。Eは同大学の専任講師であり、平成5年4月9日付で神奈川県教育長に宛て書簡(以下「本件書簡」という。)を出した。右書簡に、Bについて、女性蔑視の考えの持ち主であることは、繰返されるセクハラによって明らかで、例として、平成3年4月の職員歓迎会の場で、女子職員の乳房を掴み、暴言を吐き、Eに対しても「キスさせろ」と強要する、などと記載した。また、右書簡には、Cについて、Eの村外研究を妨害し、タクシー券を不正利用した等記載した。
平成5年6月16日及び平成6年1月26日に定例の大学教授会が開かれ、B・C・D・Eも出席していた。
B・C・DはEに対し、教授会でのEの発言及び神奈川県教育長宛書簡の記載内容により、名誉を毀損されたとして、民法709条・710条に基づき、損害賠償を求める訴えと提起したが、横浜地裁川崎支部は請求を棄却した。
これに対し、BのみがEに対し、原判決の取消し、金100万円及び年5分の遅延損害を求めて、控訴した。
なお、Eは、平成7年7月4日、神奈川県教育委員会から分限免職処分を受けたが、同処分を不服として神奈川県人事委員会に不服申立てを行い、また、右処分の取消訴訟も提起したが、両方とも却下されている。 - 主文
- 一 原判決中控訴人に関する部分を次のとおり変更する。
二 被控訴人は控訴人に対し、60万円及びこれに対する平成6年10月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
三 控訴人のその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用は、1、2審を通じて、控訴人に生じた費用の2分の1を控訴人の、控訴人に生じた費用の2分の1と被控訴人に生じた費用を被控訴人の、各負担とする。
五 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。 - 判決要旨
- 被控訴人はK委員長宛に送付した本件書簡のセクハラに関する記事により控訴人の社会的評価を低下させ、名誉を毀損したものというべきであり、控訴人は短大の教授の地位にあったものであるところ、前記のとおり右記事の記載内容は控訴人がセクハラを常態とし教育者としての資格がないという趣旨のものであったこと、これにより控訴人は任命権者である教育長から第三者立会の上で右記事記載の事実について究明を受けたこと等の諸事情を総合勘案すると、被控訴人の右名誉毀損の不法行為によって控訴人が被った精神的苦痛に対する慰謝料としては50万円と認めるのが相当である。被控訴人は右キス発言(教授会において被控訴人は控訴人から「キスさせろと言われた」旨発言したという)により控訴人の社会的評価を低下させ、その名誉を毀損したものというべきであるが、控訴人が前記のとおり外語短大の教授の地位にあるものであることや右発言が教授会の席でなされたものであることのほか、被控訴人の右発言は、前記認定のとおりいわば口論のような多少感情的なやりとりになったなかで、控訴人に追及され、具体的な行為の特定を求められたのに対する応答の形でなされたものであり、結局被控訴人が手元に資料がないので答えられない旨回答し、それ以上の具体的な摘示も追求もされることなく終わったものであること等の諸事情を勘案すれば、被控訴人の右名誉毀損の不法行為によって控訴人が被った精神的損害に対する慰謝料としては10万円と認めるのが相当である。
- 適用法規・条文
- 99:なし
- 収録文献(出典)
- なし。
- その他特記事項
- なし。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
横浜地裁川崎支部 − 平成6年(ワ)第707号 | 棄却(控訴) | 1998年03月20日 |
東京高裁 − 平成10年(ネ)第1781号 | 原判決変更(控訴人一部勝訴) | 1999年06月08日 |