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製薬会社(単身赴任)事件(控訴審)

事件の分類
配置転換
事件名
製薬会社(単身赴任)事件(控訴審)
事件番号
東京高裁 − 平成5年(ネ)第4034号
当事者
控訴人 個人五名
被控訴人 株式会社
業種
製造業
判決・決定
判決
判決決定年月日
1996年05月29日
判決決定区分
控訴棄却(控訴人敗訴)
事件の概要
控訴人A夫は、製薬被控訴人会社である被告被控訴人会社(以下「被控訴人会社」という。)に医薬情報担当として入社以来、一五年間東京営業所に所属してきた。控訴人A夫は、昭和六〇年三月一六日、東京営業所から名古屋営業所への転勤を命ぜられた(「以下、本件転勤命令」という。)。当時、控訴人の妻B子(控訴人。以下「B子」という。)は、被控訴人会社の川崎工場企画部研究総務課に図書管理担当として勤務し、子供である控訴人Tは小学三年生、控訴人Kは四歳、控訴人Rは生後七か月で、控訴人A夫とともに居住していた。控訴人A夫は、被控訴人会社における勤務の継続を考えているB子の意思に反して家族帯同赴任をすることはできないと考え、名古屋に単身赴任を余儀なくされた。しかし、三人の子供に父親としての監護養育をできるだけ果たし、また、これまで分担してきた日常家事についてB子の負担を軽減するため、毎週のように金曜日の夜に新幹線で川崎の自宅に戻り、月曜の早朝に名古屋に出勤する生活を送ることになり、家族が同居していた当時に享受していた家族生活上の安定が損なわれ、結局、B子の社会的不利益を避けるために、控訴人が、被控訴人会社に対して、本件転勤命令の無効、違法を理由として、債務不履行あるいは不法行為による損害賠償を求め、東京地裁に提訴したが、敗訴し、東京高裁に控訴した。
主文
一 本件控訴をいずれも棄却する。
ニ 控訴費用は控訴人らの負担とする。
判決要旨
小学校3年生、4歳、生後七か月の幼児を保育中の共働き夫婦の夫に対する東京から名古屋への転勤命令につき、転勤は医薬品の製造販売業を営む会社のローテーション人事の一環として業務上の必要性があること、労働者は転勤により通常受ける経済的、社会的、精神的不利益は甘受すべき範囲内のものであること、会社が家庭用住宅や単身赴任用住宅を提供し、先例にない別居手当を支給するなどの配慮措置をとっていることなどから、右命令は信義則違反、公序良俗違反、権利濫用には当たらないとされた。
適用法規・条文
02:民法90条、709条,07:労働基準法2章
収録文献(出典)
労働関係民事裁判例集47巻3号211頁
判例時報1587号144頁
判例タイムズ924号189頁
労働判例694号29頁
労働経済判例速報1720号27頁
東京高等裁判所(民事)判決時報47巻1〜12号22頁
黒川道代・ジュリスト1112号149〜151頁1997年6月1日
山川隆一・平成9年度主要民事判例解説(判例タイムズ臨時増刊978)282〜83頁1998年9月
川口美貴・労働法律旬報1407号22〜29頁1997年5月20日
毛塚勝利平成8年度重要判例解説(ジュリスト臨時増刊1113)213〜215
その他特記事項