判例データベース
大分県税理士事務所事件
- 事件の分類
- セクシュアル・ハラスメント
- 事件名
- 大分県税理士事務所事件
- 事件番号
- 大分地裁 − 平成14年(ワ)第130号
- 当事者
- 原告個人1名
被告個人1名 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2002年11月14日
- 判決決定区分
- 一部認容、一部棄却(確定)
- 事件の概要
- 原告は、平成11年10月に採用された後1ヶ月を経過した頃から、その勤務する有限会社の代表取締役である被告に、勤務時間中に「ホテルへ行こう」「不倫しよう」等と言われ出し、胸を軽く触られるようになった。その後、原告は平成13年11月まで被告から飲食を誘われるようになり、多い時には週3〜4回の頻度で被告と飲食していたが、その際居酒屋やスナックで、被告から「触らせろ」「ホテルに行こう」「付き合ってくれ」などと言われ、胸・尻・足を触られたり、抱きつかれたりした。また、被告と原告が自動車で顧客を訪れる際、車内で被告が原告の胸に触ったり、股間に手を入れたり、ホテルに誘ったりした。
その後、平成13年8月頃から被告の行為はエスカレートし、勤務時間中に原告に抱きついたり、スカートの中に手を入れたり、首筋にキスをしたり、原告を床に押し倒して身動きできないようにした上で、胸や股間等を触ることもあった。原告はこのような被告の行為に悩み、入社後1年経過した頃から退職を考えるようになったが、世の中が不景気で再就職が見つかりにくいため、被告からの飲食の誘いを断らずに出勤し続けた。
被告のこのような行為は同年11月9日まで続いたが、その後原告はセクハラ行為を受けないために被告に対し厳しい態度をとり始めた。そのため被告の原告に対するセクハラ行為は止んだが、原告が、時に担当事務以外の仕事を拒否するなど被告に対し反抗的な態度を示すことがあったことから、被告は、原告の態度が協調性を欠き、事務所運営に支障を来たすとして、平成14年2月14日に原告に対し口頭で解雇を言い渡した。これに対し、原告は被告のセクハラ行為について不法行為として600万円の損害賠償及び弁護士費用として60万円を請求した。 - 主文
- 1 被告は原告に対し、金220万円及びこれに対する平成14年2月14日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを3分し、その1を被告の、その余を原告の負担とする。
4 この判決1項は、仮に執行することができる。 - 判決要旨
- 原告は解雇された後に初めてセクハラを主張するようになったものであり、セクハラによって苦しんでいたとすれば出勤を続けたり、被告と飲食をしたりすることは考えられないとして、被告は原告の主張が解雇に対する腹いせと主張するが、原告は解雇以前からセクハラ行為について公的機関に相談をしていることから、原告の主張は信用できるものであり、被告は原告に対し、セクハラ行為によって生じた原告の精神的苦痛に対し、不法行為上の損害賠償責任を負う。
本件解雇は、原告が被告に対して厳しい態度をとり始め、職場の雰囲気が悪化する中で、原告が仕事に関しても被告に対し反抗的な態度を示したためになされたものではあるが、これは被告のセクハラ行為に対してやむを得ずにとった態度であって、原告に責任があるとはいえず、反抗的な態度には多少いき過ぎの感も否めないが、被告のそれまでのセクハラ行為の態様に鑑みれば、原告の態度には仕方がない面があり、就業規則の解雇事由に該当するとは到底いえない。
よって、本件解雇は解雇事由のない不法行為上の違法性を帯びた行為と認められるから、被告は原告に対し、本件解雇によって生じた原告の精神的苦痛に対し、不法行為上の損害賠償責任を負う。
被告の強制猥褻行為を含むセクハラ行為の態様、同行為が長期にわたって繰り返されたこと、本件解雇に至る経緯、その他の諸事情を考慮すれば、被告のセクハラ行為及び違法な本件解雇によって生じた原告の精神的苦痛を慰謝するには金200万円が相当である。また、弁護士費用としては20万円が相当である。 - 適用法規・条文
- 02:民法709条
- 収録文献(出典)
- 労働判例844号92頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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