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鹿児島県社団法人事件

事件の分類
セクシュアル・ハラスメント
事件名
鹿児島県社団法人事件
事件番号
鹿児島地裁 − 平成12年(ワ)第96号
当事者
原告個人1名

被告個人2名

被告社団法人県医師会
業種
サービス業
判決・決定
判決
判決決定年月日
2001年11月27日
判決決定区分
一部認容、一部棄却(確定)
事件の概要
 被告医師会の職員であった原告が、研修旅行の懇親会の二次会において、上司である被告らに身体に接触され、軽くキスをされるなどのセクハラを受けたと主張した。その後原告は、話し合いによっても解決しないために退職し、セクハラの行為者である被告2名と被告医師会に対して、損害賠償請求を行った。これに対して被告らは、過去の忘年会等で1回もセクハラはなかったこと、本件も原告が主張するようなセクハラは行われていないこと、当時の状況、原告の対応等に照らすと、社会通念上の許容範囲を超えておらず、損害賠償の対象にはならないと主張した。
主文
1 被告は原告に対し、金30万円を支払え。2 原告のその余の請求を棄却する。
判決要旨
 被告による原告へのキスは、たとえ1回のみ軽く行われたものであっても、行為の性質、被告と原告との関係、当時の状況等に照らせば、被告が仕事上の地位を利用して行った原告の意に反する性的意味を有する身体的接触行為で、社会通念上許容される限度を超えるものであり、いわゆるセクハラ行為として、原告の性的自由及び人格権を侵害する不法行為というべきである。 本件研修旅行及び懇親会は、大多数の職員が参加し、費用も被告医師会と参加者が折半するものであって、被告医師会の事業の執行と密接に関係するものであるが、一度解散した後に被告らと原告が偶然出会って開催されるに至った本件二次会の経緯に照らせば、セクハラ行為が民法第715条所定の事業の執行につき行われたということはできないから、被告医師会が使用者責任を負うことはない。 セクハラ行為は、ここ十数年来社会問題化しており、平成11年4月の男女雇用機会均等法第21条により、事業主のセクハラ行為防止のための配慮義務が規定されたことからすれば、事業主は職場における性的な言動に対する女性職員の対応により労働条件等不利益を受けないように、また、性的な言動により女性職員の就業環境が害されることがないように雇用管理上必要な配慮を行う義務を有すると解される。 被告医師会においては、過去セクハラ行為が日常的に行われていたとは認められないが、本件以前にはセクハラを防止する組織的な措置は全くとられていなかったところ、職員らのセクハラ行為に対する知識及び認識は極めて不十分であったと言わざるを得ない。したがって、被告医師会が、女子職員がセクハラ行為等を受けないように職場環境を維持・調整する義務を尽くしていたとは言い難く、職場環境維持・調整義務の懈怠として、原告が被った損害について、不法行為に基づき被告と共同して賠償する責任を負うというべきである。
適用法規・条文
02:民法709条02:民法715条08:男女雇用機会均等法21条
収録文献(出典)
労働判例836号151頁
その他特記事項