判例データベース
Cタクシー等解雇事件
- 事件の分類
- セクシュアル・ハラスメント
- 事件名
- Cタクシー等解雇事件
- 事件番号
- 徳島地裁 − 平成8年(ヨ)第111号
- 当事者
- その他債権者 個人3名A、B、C
その他債務者 タクシー会社3社X、Y、Z - 業種
- 運輸・通信業
- 判決・決定
- 決定
- 判決決定年月日
- 1996年10月15日
- 判決決定区分
- 認容
- 事件の概要
- 債務者会社X,Y,Zはいずれもタクシー運送を業とする会社で、Xを中心に一体的な業務遂行、労務管理がなされている。一方債権者A,B,Cは、それぞれX,Y,Zに雇用され、いずれもXの無線室で配車業務に従事してきた女性社員である。
平成8年1月27日の就業時間中、Bは部長DからCの勤務割についての助言を求められ、その件について話しをしていたところ、Dは途中から仕事と全く関係のない卑猥な話をしながらBの身体に触れようとし、更にこれを嫌悪して退室しようとするBの手の甲を上から触る等の行為をした。Bから事情を聴いた無線室責任者のAは、Dが従来からこのような行為を繰り返していたことから、Bを連れて抗議に行ったところ、Dは激怒し、Bに殴りかからんばかりの気勢を示した。
同月31日、一連の経過についてDから虚偽の報告を受けた債務者の社長は、A,Bらに争いの非があると軽信して、Aを社長室に呼び出すや、やめてしまえと怒号し、事態の不当性とAの解雇理由を質しにやってきたBに対しても、Aは勝手に辞めた、お前も要らない等と述べ、裁判も辞さないとのBの問い掛けに対しても、勝手にしろと返答するのみであった。更にこの直後、無線室でA、B、Cが居たところ、社長、Dらが管理職を伴って来室し、A,B,Cの席を奪い取って配車業務を始めたため、Aらは就業できなくなった。A,B,Cは債務者Xらに違法な解雇をされたとして、地位保全仮処分、賃金仮払いの仮処分を求めたが、債務者Xらは、Aらは自発的に退職したのであって、仮に従業員たる地位を未だ有しているとしても、就労がない以上は賃金請求権を有していないと主張して申立ての却下を求めた。 - 主文
- 判決要旨
- Aは昭和59年の入社以来、意欲的に業務に取り組んでおり、そのまじめな仕事振りは社長も認めるほどであり、これまで自ら退職するような話をしたこともなく、また、今後同種の被害をなくし快適な職場環境を作るべく部長Dらに忠言していたのであるから、Aが勤務を継続する意思を有していたことは間違いない。またBは入社後日が浅く、勤務態度も遅刻が多いとか、言葉遣いに適切を欠くなど多少問題がないわけではなく、本件でもDに対して興奮して不穏当な発言をしたり、会社を辞めるという趣旨に解されかねないような発言をした事実があるけれども、それが真意であるとは認められないことは、Bが社長に対し、裁判に訴えるとまで述べて抗議していることからも明らかである。更に、Cについても、社長らから執務机を一方的に奪われて執務できなくなったのであるから、これによりCが自主的に執務を放棄し任意退職したとは到底認められない。したがって、債権者らは、雇用契約上の権利を有する地位にある。
債権者らに対する本件解雇は、いずれも社長が会社の就業規則も検討しないまま独断専行したものといわざるを得ないもので、債務者らの就業規則に定められた解雇事由のいずれにも該当しない不当な理由によるものであるから、無効であるといわざるを得ない。そうすると、無効な解雇の意思表示をされて就労を拒否されている労働者はその間の賃金請求権を失わないから、債権者らは債務者らに対して賃金請求権を有している。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- 労働判例707号91頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|