判例データベース
全国社会保険協会連合会・仮処分保全異議申立事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- 全国社会保険協会連合会・仮処分保全異議申立事件
- 事件番号
- 京都地裁 − 平成12年(モ)第1743号
- 当事者
- その他債権者 個人1名
その他債務者 社団法人全国社会保険協会連合会 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 決定
- 判決決定年月日
- 2001年02月13日
- 判決決定区分
- 仮処分決定認可
- 事件の概要
- 債権者は、平成10年4月1日からパート看護婦として1年間の雇用期間を定めて債務者病院に雇用され、期間満了で雇用契約が終了するとの債務者の指摘に対し異議を述べ、組合交渉を経て、平成11年9月末日までの労働契約を締結し、更に平成12年3月末日までの労働契約を締結したが、同日をもって雇止めされた。債権者は、本件労働契約は、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在しているか、少なくとも債権者において期間満了後も雇用が継続すると期待することに合理性が認められる場合であるところ、本件雇止めは期間満了の一事をもって行われたものであり、何ら合理的な理由がないので、信義則上許されないとして、パート看護婦としての地位の確認と賃金の支払いを求める仮処分を申請した。これについて仮処分決定においては、債権者の主張を認め、債務者に対しパート看護婦としての地位の確認と賃金の支払いを命じたため、債務者がこの決定の取消しを求めて異議申立てを行った。
- 主文
- 1 債権者と債務者との間の京都地方裁判所平成12年(ヨ)395号地位保全等仮処分命令申立事件について、当裁判所が同年9月11日にした仮処分の主文1,2項を認可する。
2 申立費用は債務者の負担とする。 - 判決要旨
- 債務者病院では、従来、多数のパート助産婦及びパート看護婦が勤務しており、その雇用期間は概ね6ヶ月又は2ヶ月とされていたが、これらの者が必ずしも期間満了によって雇止めされるとは限らず、パート助産婦やパート看護婦の中にも契約の更新を重ねてきた者が存在するし、また、個別的事情があったとはいえ、正規職員看護婦になるための試験を受けることなく、同看護婦に欠員が生じたことや、夜勤ができるようになったことから、正規職員看護婦に採用されたパート看護婦も存在した。また債務者は、債権者の雇止めに伴って新たなパート看護婦を1名採用した。
本件において債権者が期間満了後の雇用継続を期待することには合理性があり、その期待は法的保護に値するものであるから、債権者に対する雇止めには解雇に関する法理が類推適用され、単に労働契約の期間が満了したというだけでは雇止めは許されず、客観的に合理的な理由が必要であり、これを欠く雇止めは社会通念上相当として是認することができないといわなければならない。ところが、本件雇止めは、客観的に見て合理的な理由があるとはいい難いので,社会通念上相当として是認することができず、信義則上許されないものというべきである。
ところで、債務者は、事務局次長が平成11年10月4,5日頃、「これで最後やからね」と言って債権者に契約書の署名を求め、債権者もこれに応じて署名したのであるから、債権者は平成12年3月31日限り契約が終了することを明確に認識していた旨主張するが、債権者は、平成11年3月5日に同次長から言われたとおり、契約書の雇用期間は形式上のもので、これをもって辞めさせられることはないと信頼していたにもかかわらず、「これが最後やからね」という同次長の発言があったため、直ちに契約書に署名せず組合に相談したとみることができるので、同次長の発言があったとしても、なお期間満了後の雇用継続に対する債権者の期待は合理的なものであったということができる。
以上のとおりであるから、本件雇止めが信義則上許されない結果として、期間満了後における債権者と債務者との間の法律関係は、従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解すべきである。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- 労働経済判例速報1788号12頁
- その他特記事項
- 本件は高裁に対し抗告がなされた。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
京都地裁 − 平成12年(ヨ)第395号 | 一部認容・一部却下 | 2000年09月11日 |
京都地裁 − 平成12年(モ)第1743号 | 仮処分決定認可 | 2001年02月13日 |
京都地裁 − 平成12年(ワ)第3087号 | 一部認容・一部却下(控訴) | 2001年09月10日 |
大阪高裁 − 平成13年(ラ)第288号 | 取消し | 2001年10月15日 |