判例データベース
福岡市女性協会雇止め事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- 福岡市女性協会雇止め事件
- 事件番号
- 福岡地裁 − 平成14年(ワ)第2192号
- 当事者
- 原告 個人1名
被告 福岡市女性協会 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2003年10月02日
- 判決決定区分
- 一部認容・一部棄却(控訴)
- 事件の概要
- 被告は、女性の自立と社会参画の促進等を目的とする女性センターの運営などのために設立された福岡市の外郭団体であり、原告は、平成4年1月、雇用期間3ヶ月・週3日勤務の臨時的任用職員として被告に雇われ、その後平成13年10月1日まで6ヶ月ごとに雇用契約の更新を繰り返して出向職員及び嘱託職員の補助業務に従事していた。この間、給与日額の昇給はあったものの、業務内容、勤務所属係、雇用期間に変更がなく、更新の際に当たり、被告は原告に対し、所属、職種、任用期間、給与日額などを記載した臨時的任用通知書を交付していたが、それが更新後しばらくしてなされるということもあった。その後、被告は、原告に対し、週5日・2ヶ月勤務、その後2ヵ月間間を置いて同一条件で再雇用するとの雇用条件の変更を申し入れたが、原告がこれを拒否したため、平成14年3月31日をもって雇用契約を打ち切った。
原告は、この間継続的に就業しており、稼動状況は出向職員らと比肩すべきものといえるから、原告と被告との間には、期間の定めがない契約と実質的に異ならない関係が生じたと解すべきであって、本件雇止めは無効であるとして、雇用契約上の地位確認と賃金の支払いを請求した。 - 主文
- 判決要旨
- 原告は、平成4年1月、被告との間で雇用期間3ヶ月の雇用契約を締結し、その後平成13年10月1日まで当然のごとく雇用契約の更新を繰り返し、継続的に就業しており、しかも、その内容は、名目こそ補助職ではあるものの、原告の稼働状況は出向職員らのそれに比肩すべきものといえるから、係る事情に照らせば、原告と被告との間には、期間の定めがない契約と実質的には異ならない関係が生じたと解すべきである。よって、社会通念上相当なものとして是認することができない限り、被告が、期間満了を理由として、本件雇用契約の終了を主張することは、信義則上許されないというべきである。
雇用契約の終了という事実が労働者にとって重大な結果をもたらす以上、雇用条件の変更を伴う雇用契約の更新の申入れに対して労働者が拒否した場合に、期間満了を原因として雇用契約が終了したというためには、雇用条件を変更する必要性があり、その必要性が当該変更により労働者が被る不利益を上回っていて、雇用条件の変更を伴う雇用契約の更新がそれに応じない場合の雇用契約の終了という結果を正当化するものであって、かつ、雇用契約終了を回避するための努力が尽くされているといえる事情が認められなければならないというべきである。
本件被告の申し入れのように、週5日・2ヶ月間勤務し、その後2ヶ月間間を置いて再雇用されることを繰り返した場合、年間給与総額は20万円から21万円程度減少することが認められ、かかる減少を軽視することは許されない。被告が主張する雇用条件は、2ヶ月後に同一条件で再雇用することを努力するというものであるが、被告は原告を再雇用する法的義務を負うものではない上、仮に再雇用してもその期間が必ず2ヶ月になるわけではなく、原告は極めて不安定な状態に立たされることになる。
他方、雇用条件の変更の必要性をみるに、原告が約10年程週3日の条件で就業してきたが、特段の支障がなかったこと、被告が主張するように本件雇用条件の変更により人件費の減少が認められるものの、原告を含めて臨時的任用職員全員の勤務条件を一律週5日・2ヶ月勤務としなければ、被告は運営上必要とされる経費節減を達成できないとまではいうことができない。
雇用条件を週3日・6ヶ月勤務から、週5日・2ヶ月勤務に移行することは、およそ不合理なものとはいえず、それを選択することも、経営判断の1つとしてあり得ることではあるが,原告の不利益を上回るほどの必要性をそこに見出すことは困難といえる。したがって、被告は、期間満了を理由として、本件雇用契約の終了を主張することは信義則上許されないというべきであるから、原告と被告との間には本件雇用契約が更新されたものと同様の法律関係が存在すると解すべきである。
以上によれば、原告の本訴請求は、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、給与14万1422円及び平成14年7月以降毎月15日限り1ヶ月7万0711円の割合による金員の支払いを求める限度で理由がある。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- 労働判例863号82頁
- その他特記事項
- 本件は控訴された。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
---|---|---|
福岡地裁 − 平成14年(ワ)第2192号 | 一部認容・一部棄却(控訴) | 2003年10月02日 |
福岡高裁 − 平成15年(ネ)第869号 | 認容(原判決一部取り消し) | 2004年10月01日 |