判例データベース

福岡市女性協会雇止め控訴事件

事件の分類
雇止め
事件名
福岡市女性協会雇止め控訴事件
事件番号
福岡高裁 − 平成15年(ネ)第869号
当事者
控訴人福岡市女性協会

被控訴人個人1名
業種
サービス業
判決・決定
判決
判決決定年月日
2004年10月01日
判決決定区分
認容(原判決一部取り消し)
事件の概要
 被控訴人(1審原告)は、福岡市の外郭団体である控訴人(1審被告)に、平成4年1月、雇用期間3ヶ月として雇用され、さらに、同年4月1日、雇用期間を6ヶ月とする雇用契約を締結し、臨時職員として就労していたが、被控訴人から週5日・2ヶ月勤務、2ヶ月間を置いて再雇用に雇用条件を変更するとの申し出を拒否して、平成14年3月31日、雇用期間満了を理由に雇止めされた。そこで原告は、本件雇止めの無効を主張して、控訴人に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び未払い給与等の支払いを求めた。
 第1審では、本件雇用契約においては、期間の定めがない契約と実質的に異ならない関係が生じたと解すべきであり、控訴人が期間満了を理由に、本件雇用契約の終了を主張することは信義則上許されないとして、地位確認請求を認容し、未払い給与等の支払い請求を一部認容したことから、控訴人はこれを不服として控訴した。
主文
判決要旨
 被控訴人は、雇用期間を6ヶ月と定めて、平成4年4月以降、臨時的任用職員としての雇用期間が19回にわたって更新されていたのであり、その間、業務内容、勤務所属係及び雇用期間には変更がなく、約10年間同一の勤務形態による就労が継続していること、担当業務についても、事実上広範化している上、被控訴人が業務に習熟し、経験を有することから、定型的業務については逐一出向職員の指示を受けなくても滞りなく遂行していることや、本来担当の嘱託職員が担当することとされている一部の業務も被控訴人が行っていることが認められるが、その内容は補助的業務に止まり、事業の企画、運営等の統括、実施等の業務は専ら正職員が行っており、被控訴人が関与していないことが認められる。このように、控訴人においては、出向職員と臨時的任用職員の担当事務を区別しており、被控訴人は、本件雇用契約に基づく業務を担当していたと認めるのが相当である。さらに控訴人は、本件雇用契約に定める雇用期間が満了する都度、少なくとも1年に1回は被控訴人に対して履歴書の提出を求め、被控訴人もこれに応じて履歴書を提出していたのであり、本雇用契約を更新するに当たっては、若干の遅滞はあるものの、「臨時的任用通知書」を交付する等して、その旨告知していたことが認められる。

 そうすると、控訴人は、被控訴人を本件雇用契約によって雇用期間を6ヶ月とする臨時的任用職員として雇用したのであり、その後、本件雇用契約が終了したとするまでの間、控訴人は所定の手続きに従って雇用期間に関する更新を行っており、被控訴人も雇用期間、満了の都度、履歴書を提出し、「臨時的任用通知書」の交付を受けるなどして、更新による手続きが履践されていたことを了知していたのであるし、被控訴人の本件雇用契約にかかる業務内容、勤務形態等に格別の変更はなく、かかる変更を示唆するような経緯もなかったのであるから、被控訴人が主張する事情を勘案しても、本件雇用契約が期間の定めのない契約と実質的に異ならないものとなったと認めることは困難である。本件雇用契約は6ヶ月の定めがある契約であり、雇用期間満了において、更新等の手続きがなされない限り、本件雇用契約は終了するというべきであり、控訴人は、平成14年3月31日をもって本件雇用契約は終了したとして、更新の手続きをしなかったのであるから、控訴人と被控訴人の雇用関係は、同日を持って終了したものと認められる。
 本件雇用契約は、10年余にわたって雇用期間が満了する都度更新を繰り返していたもので、被控訴人が雇用契約更新の期待を有していたであろうことは否定できないと認められる。控訴人は福岡市から平成14年度の経常的経費や賃金等について削減を求められたため、臨時的任用職員の勤務形態について見直しを余儀なくされ、そのための勤務形態変更について被控訴人らに説明したところ、被控訴人がこれに応じなかったことから、勤務形態変更に伴う減収について配慮し、再雇用までの期間、雇用受入れ先をあっせんするなどしたが妥協に至らずに本件雇用契約の終了を通知したのである。控訴人は福岡市から経費節減等の指示を受けた後も、被控訴人を含む臨時的任用職員については、なお雇用の継続を図ることを前提として勤務形態の変更を求める等、被控訴人の不利益を回避するために相応の対応をした経緯も存するのであり、加えて、本件に至るまでの間、控訴人において、被控訴人に対し、雇用期間の定めにかかわらず、期間の定めなく雇用を継続することを示唆する等、これを期待させるような言動をしたり、制度を取り入れる等する言辞をした経緯は認められないから、控訴人が本件通知をしたことが、信義則に反するものと認めることはできない。
適用法規・条文
収録文献(出典)
労働判例890号89頁
その他特記事項
本件は上告された(2005年2月4日棄却・不受理決定 平成16年(オ)1999号)。