判例データベース
近畿K社雇止事件
- 事件の分類
- 雇止め
- 事件名
- 近畿K社雇止事件
- 事件番号
- 大阪地裁 - 平成15年(フ)第3011号
- 当事者
- 原告 個人3名A、B、C
被告 株式会社 - 業種
- 製造業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2005年01月13日
- 判決決定区分
- 棄却(控訴)
- 事件の概要
- 原告A、Bは平成5年3月、原告Cは平成元年5月に、それぞれ被告にパート労働者として採用され、自動販売機への飲料の挿入等の業務を行っていた。当初原告らの雇用期間は明らかでなかったが、被告は平成7年4月に、従前の期間社員就業規則を廃止して新たなパートナー社員就業規則を作成し、原告らを含むパートナー社員(雇用期間を定めて雇い入れられ、就業時間、賃金等が労働契約書により個別に定められた者)にこれを交付した。この規則には、「労働契約書の雇用契約期間満了になったとき」には退職するものとする、と定められており、被告は原告らとの間で、個別に雇用期間を平成7年4月1日から同年12月31日までとする労働契約書を作成した。そして、平成8年1月以降、被告は原告らとの間で、毎年、雇用期間を1月1日から12月31日までの1年間とする労働契約書を作成し、これを原告らに交付した上、原告らが署名押印するという手続きがとられていた。
その後、被告は経営構造改革の1つとして子会社への業務委託等を行うこととし、平成13年11月、在籍する76名のパートナー社員に対する説明会において、平成14年1月以降パートナー社員の業務を含む業務を子会社に委託すること、パートナー社員については平成14年1年間は被告が雇用するが、業務上の指揮命令、労務管理等は子会社が担当すること、被告とパートナー社員との雇用期間は平成14年12月末を持って満了し、以後継続雇用はしないので、残りの有給休暇は全部使って欲しいことを説明した上、パートナー社員に対し、平成14年の契約更新の意思を確認したところ、原告らも大半のパートナー社員と同様契約更新を希望した。
被告は、平成13年12月、原告らを含むパートナー社員に対し、平成14年度の契約書に署名押印を求めたところ、原告A、Bとも特に異議を述べることなく署名押印したほか、原告Cは自宅から署名押印した契約書を異議を述べることなく被告宛送付した。
平成14年6月、被告から業務委託を受けた子会社は、パートナー社員に対する説明会を開き、被告とパートナー社員との契約は平成14年12月末日をもって終了し、以後継続雇用しないこと、有給休暇を計画的に取得して欲しいこと等の説明を行い、同年10月にも被告及び子会社は説明会を開き、同様の説明を行った。原告らはこれらの説明会にいずれも出席した。10月の説明会においては、被告は原告らに対し、パートナー社員としての期間に応じた退職餞別金通知書を交付したが、原告A、Bから短期パートタイマーの期間も餞別金の算定の基礎に入れるべきとの抗議を受けて修正のうえ交付した。
平成14年11月7日付けで、被告は原告らを含む76名のパートナー社員に対し、12月末日で雇用期間が満了する旨通知した。一方子会社は、雇止めされたパートナー社員のうち45名を面接の上採用したが、原告らはいずれも採用されなかった。原告らはその後地域労組に加入し、本件雇止の実質は解雇であるとして、その撤回等を要求して平成14年11月から15年3月まで4回の団体交渉を行ったが合意に至らなかった。そこで原告らは、被告の従業員の地位にあることの確認と、雇止め以降の期間に係る賃金の支払いを求めて提訴した。 - 主文
- 1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は、原告らの負担とする。 - 判決要旨
- 本件各雇用契約は、少なくとも平成7年4月以降に関しては、期間の定めのある契約であって、その更新が繰り返されたことをもって、雇用契約自体が期間の定めのない契約となるものということはできない。
しかしながら、(1)本件の原告らの業務は臨時的な性質はなかったこと、(2)原告らは一部の業務を除き正社員と同様の業務に従事していたこと、(3)原告らは被告に採用されてから本雇止めまで9年ないし13年、平成7年4月以降に限っても7年以上にわたって勤務を続け、契約も7回更新されたこと、(4)契約更新の際には契約書に記名押印する等の手続きがとられてはいたものの、契約書の作成が新たな雇用期間の開始後になることもあったこと、(5)契約書の作成に当たり、被告から原告らに内容の確認をすることはあっても、契約更新の意思について明確な確認を行われることはなかったこと、(6)本件雇止めまでの間は、被告がパートナー社員を雇止めにしたことはなかったことが認められる。以上の事実を考慮すると、本件各雇用契約について、期間の定めのない契約と何ら異ならない状態にあるとまではいえないとしても、その雇用関係は、ある程度の継続が期待されていたというべきであり、被告が雇止めによって雇用を終了させるためには、解雇に関する法理が類推適用されるというべきである。
(1)被告は平成13年11月、原告らに対し、平成14年12月末日をもって雇用契約は満了となり、継続雇用はしないので有給休暇を全部使って欲しいと述べ、14年の契約書には不更新条項を入れることを説明した上で契約更新の希望を確認したこと、(2)被告は、平成13年12月、14年の雇用契約書を交付したが、原告らはこれに記名押印した上、確認印を押していること、(3)同契約書については原告らも保管していたが、被告に対して異議を述べることはなかったこと、(4)原告らは平成13年度の年休消化率が60%前後であったが、14年度は100%であること、(5)所定労働時間が短いために雇用保険の被保険者とならない取扱いを受けるおそれのあったパートナー社員の大半は、被保険者となるよう労働時間を増やすことを選択したことが認められる。以上の通り、被告と原告らとの間においては、平成14年12月末日をもって本件各雇用契約を終了させる旨の合意が成立していたというべきである。
原告らは、1年後に退職する旨の明確かつ客観的な意思表示がないと主張するが、契約不更新条項の記載された本件契約書に原告らは記名押印し、確認印まで押しているのであるから、その意思表示は明確かつ客観的である。また、原告は不更新条項について公序良俗に反して無効である旨主張するが、これを無効とする根拠はない。また、原告らがかかる合意をしたことに鑑みれば、本件各契約書の作成については、本件各雇用契約について、その継続が期待されていたと言うことはできないから、解雇に関する法理を類推適用する余地はなく、この点からも。本件各雇用契約は、期間満了により、平成14年12月末日をもって終了したというべきである。 - 適用法規・条文
- 収録文献(出典)
- 労働判例893号150頁
- その他特記事項
- 本件は控訴された。
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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