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R派遣会社損害賠償請求控訴事件
- 事件の分類
- その他
- 事件名
- R派遣会社損害賠償請求控訴事件
- 事件番号
- 東京地裁 − 平成17年(レ)第155号
- 当事者
- 控訴人(第1審 原告) 個人1名
被控訴人(第1審 被告) 株式会社 - 業種
- サービス業
- 判決・決定
- 判決
- 判決決定年月日
- 2005年07月20日
- 判決決定区分
- 棄却(確定)
- 事件の概要
- 被控訴人は、一般労働者派遣事業等を行う会社であり、控訴人は、販売促進業務の派遣スタッフ募集の広告を見て、平成16年7月20日に被控訴人に派遣登録した女性である。
控訴人は、登録当日、被控訴人担当者から家電等販売の派遣先があることの説明を受け、これを希望したところ、同月26日派遣先の担当者と面談することとなり、被控訴人担当者Aからスキルシートを渡され、これに基づいて本件派遣先に自己紹介するよう説明を受けた。その後控訴人とAは、本件派遣先担当者2名と面談し、派遣先から具体的な仕事の内容等についての説明を受け、ノルマはないが販売目標はあることを確認したが、翌27日、Aは控訴人に対し、電話で本件派遣先に派遣しない旨連絡した。
控訴人は、Aから説明された本件派遣先での就業条件を承諾したことにより、控訴人と被控訴人との間で派遣労働契約が成立していること、本件面談は労働者派遣法26条7項が禁止する派遣先の事前面接であって、被控訴人がこれに協力したことは不法行為に当たるとして、2ヶ月相当の賃金、交通費その他61万6760円の損害賠償を請求した。第1審の簡易裁判所では、この請求を棄却したことから、控訴したものである。 - 主文
- 1 本件控訴を棄却する。
2 訴訟費用は控訴人の負担とする。 - 判決要旨
- 1 派遣労働契約の成否
被控訴人への派遣登録は、派遣労働契約を申し込もうとする求職者名簿のような機能を有するに過ぎず、被控訴人から登録労働者に対してする派遣先の紹介は派遣労働契約の申し込みの誘引であり、これに応じて、登録労働者が被控訴人に対し派遣労働契約を申し込み、被控訴人がこれを承諾することによって派遣労働契約が成立すると解すべきである。
控訴人は、平成16年7月21日、被控訴人担当者Aから本件派遣先を紹介されて、説明された本件派遣先での就業条件を承諾したことにより、派遣労働契約が成立したと主張するが、控訴人が被控訴人から本件派遣先での就業条件の説明を受け、派遣を希望したとしても、それは派遣労働契約の申し込みに過ぎず、他に派遣労働契約が成立したことを認めるに足る証拠はないから、派遣労働契約.が成立したことを前提にする控訴人の賃金、日当及び交通費の請求は認められない。
2 不法行為に基づく損害賠償請求の当否
控訴人は、被控訴人に対し、派遣先の事前面接に協力したことが不法行為であるとして、得べかりし賃金2ヶ月相当額並びに事前面接のための交通費相当額及び日当相当額の損害賠償を請求する。しかし、もともと労働者派遣法26条7項は、派遣先に対し、特定行為をしないよう努力義務を課すにとどまっているから、本件派遣先がこれに違反して特定行為をし、被控訴人がこれに協力したとしても、直ちにこれが不法行為になるとはいえないところ、控訴人は本件面談を行うにつき同項の規定があることを知ったが、本件派遣先が大企業であることから特に問題はないと考え、控訴人としても就業条件を確認する必要もあって本件面談に応じたことが認められる。しかも、Aは本件面談の日時を決める際、控訴人となかなか電話連絡が取れず、本件面談当日、控訴人が事前連絡なく遅刻した上、面談においても受け答えが適切にできなかったことから、控訴人には本件派遣先での仕事に対する適性がないと判断したことが認められるのであって、本件派遣先が本件面談の結果控訴人の派遣を断ったために、被控訴人が控訴人の派遣を取りやめたという事実を認めるに足りる証拠はない。
このような事情を総合すれば、本件面談は、単なる派遣先との事前打ち合わせに留まるとは言い切れないとしても、被控訴人が控訴人に対し賃金等相当額の損害賠償を負うべき違法行為ということはできず、また、これが原因で控訴人主張の損害が発生したと見ることもできない。したがって、不法行為に基づく控訴人の被控訴人に対する賃金等相当損害金の請求も認められない。 - 適用法規・条文
- なし
- 収録文献(出典)
- 労働判例901号85頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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