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E航空会社契約社員更新拒絶事件
- 事件の分類
- 解雇
- 事件名
- E航空会社契約社員更新拒絶事件
- 事件番号
- 大阪地裁 − 平成11年(ヨ)第10089号
- 当事者
- その他債権者 個人1名
その他債務者 航空会社 - 業種
- 運輸・通信業
- 判決・決定
- 決定
- 判決決定年月日
- 2002年05月09日
- 判決決定区分
- 一部認容・一部却下
- 事件の概要
- 債務者は、本社をフランスに置く航空会社であり、債権者は昭和41年9月生まれで、平成2年2月以来、いくつかの航空会社の契約社員、派遣社員として雇用された後、平成9年7月7日、期間を平成10年7月6日までとする臨時契約社員として債務者に採用された女性である。債権者と債務者は、同年7月2日、期間を平成11年7月6日までとして、本契約を更新したが、同年6月4日、債務者は債権者に対し、本件契約を更新しない旨通告した。
これに対し債権者は、債務者においては臨時契約社員の多くは正社員に登用されており、継続雇用を期待することに合理性があるとして、従業員としての地位保全を求めて仮処分の申請を行った。 - 主文
- 判決要旨
- 1 本件更新拒絶に解雇法理の適用があるか
債務者日本支社においては、昭和59年以後の16年間、女性42名を臨時契約社員として採用し、そのうち19名を、1ないし3回更新後、正社員として採用したこと、また、内13名(債権者を除く)は退職していること、女性の正社員を臨時契約社員以外から採用したことはないことを認めることができる。これによれば、債務者日本支社においては、正社員を採用するについて、まず臨時契約社員として雇用することとしているかのように取れないこともない。しかし、臨時契約社員の中には、更新拒絶によって、退職や転職を余儀なくされた者もあり、臨時契約社員を2,3年後に必ず正社員にするのであれば、臨時契約社員として採用する意味がないともいえる。
債務者は、業務量増加に対応するために採用した派遣社員Aが急に辞めたため、その後任として債権者を採用したと主張し、一方債権者は正社員Bの後任として採用されたと主張するが、その地位及び業務内容からいって債権者の主張を採用することはできない。しかしながら、債務者が債権者に対し、名古屋―パリ直行便が就航することに伴う業務量増加に対応するための臨時採用であると説明したことはなく、むしろ継続して雇用することを前提とした発言をしたことが認められる。債務者はこれを否定するが、臨時契約社員の中から正社員が雇用されているという実態があり、Aの後任を至急確保する必要があったことからすると、債権者の歓心を買うような発言をしたものと推認される。そして雇用後における、上司の「正社員になってもらいたい」といった趣旨の発言は、債権者の職務の精励を求めるもので、正社員にするという約束とはいえないが、これが本件契約の更新に対する期待をもたらすものであることは否定しがたい。したがって、本件契約は更新を予定した契約であって、更新拒絶には合理的な理由を必要とするというべきである。
2 本件更新拒絶の合理性の有無
債務者は、本件更新拒絶の理由について、タヒチ線の廃止、名古屋―パリ直行便の廃止等による業務量の減少を挙げるところ、確かにこれらによって予約業務量が減少したことは推認できるが、債権者の行う業務量が格段に減少したということも認められない。また、西日本地区における予約業務量は減少傾向にあるが、平成11年6月の時点において、これが債権者について本件更新拒絶を正当とする程度の減少があったとする疎明には至っていない。してみれば、本件更新拒絶については、未だ合理性を肯定できないから、本件契約は平成11年7月以降も継続したものということができる。 - 適用法規・条文
- なし
- 収録文献(出典)
- 労働判例800号89頁
- その他特記事項
顛末情報
事件番号 | 判決決定区分 | 判決年月日 |
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